こうした状況で妻は夫とともにクリニックを受診し、「盗撮という性的逸脱行動の背景には性嗜好障害、つまり性依存症という病気がある」 「適切な治療を受ければ、再発防止ができる」と説明を受け、光明を見いだします。ただ、その説明は非常に慎重に行わなければいけません。「病気だから罪を犯しても仕方がない」ということではないですし、被害者にとっては病気であろうがなかろうが、傷つけられたことに変わりはありません。どんな理由があっても性犯罪は許されません。しかし、加害者家族にとっては、自分が再生するための道が少しだけ見える瞬間でもあるのです。
加害者の更生・回復において家族の存在は大きな力
「平成27年版 犯罪白書」では、執行猶予者の性犯罪再犯率を見ると、犯行時の婚姻状態別に再犯率が調査されており、「未婚」(14.2%)は、「既婚」(7.1%)の2倍の再犯率であることがわかります(下図参照)。
当クリニックでも、配偶者がいる加害者のほうが、未婚者に比べて治療継続率が高いことは、過去のプログラム実績からも明らかです。
もちろんそれぞれの家族がさまざまな事情を抱えているので、事件がきっかけで離婚したり、別居することはやむを得ません。子どもを育てていくうえで、安全・安心な環境を選ぶために離婚することも大いにありうるでしょう。また、子どもが学校でいじめられるリスクを回避するために、転校や離婚をしてあえて子どもを妻の名字に変更するケースもあります。
このように、加害者の更生・回復において家族の存在はとても大きな力になります。再発を防ぎ、新たな被害者を生まないためにも、加害者家族への支援の必要性が多くの人に広まることを願ってやみません。
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