検挙件数がこの10年で倍増している「盗撮」は、やめたくてもやめられない「依存症」の一つだ。果たして、男たちはなぜ盗撮を始め、やめたくてもやめられなくなってしまうほど、その行為に耽溺してしまうのだろうか。
ここでは、精神保健福祉士・社会福祉士としてさまざまな依存症治療に取り組む斉藤章佳氏の著書『盗撮をやめられない男たち』(扶桑社)の一部を抜粋。加害者男性の生の声を紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)
※登場する人物や事例は、本人が特定できないように内容を一部改変しています
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通勤時もプライベートもチャンスがあれば盗撮
斉藤 盗撮行為は通勤時に行っていたのですか?
H 通勤時もプライベートで移動するときもやっていました。盗撮できるチャンスがあればやるといった感じです。例えば電車が混んでいるときは、相手から死角になって見えない角度を狙って撮ったりしていました。そうしてどんどん盗撮枚数が増えていった感じです。
斉藤 盗撮に使っていたのはやはりスマホですか?
H はい、最初は自分のAndroidのスマホを使っていたのですが、会社から支給されたiPhone7のほうがシャッター音が小さく、カメラの性能も使い勝手が良かったため、盗撮するときはもっぱらiPhoneを使うようになりました。
コレクションの感覚で盗撮写真を撮りためていた
斉藤 当時、平均して1か月に何枚くらい撮っていたか覚えていますか?
H う~ん……仮に一日平均20枚撮っていたとして、1か月で約600枚ですね。なので、5年間で数千枚は撮りためた計算になります。僕、もともと収集癖があってジャンパーやボールペン、ペットボトルのキャップについているコレクションや、アニメのフィギュアなどを集めていたので、それと同じ感覚で盗撮写真を撮りためていました。まさに“ため込み”です。
斉藤 すごい回数ですね。でも、スマホに何千枚も写真をため込んでいると、なかには見ていない写真も出てくるのではないですか?
H はい、盗撮していた期間の後半は撮るだけでまったく見返していないものも多数ありました。だからといって、一括で消去してしまうのはもったいなくて。消去する前に一回は確認しておきたいという変な気持ちもあって、どんどんたまっていきました。