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2021/09/05

治療とつながり人生に前向きになれた

H 今は2年以上継続してクリニックに通って治療プログラムに参加することで、自分をいい意味で縛り、また盗撮をしないための習慣を身に着けています。でも、自分のことをどこか信用していない部分があるので、プログラムに参加しなくなって気を抜いたらまた元に戻る可能性が十分にあると思いながら、気を抜かないよう過ごしています。

斉藤 こういう言い方はどうかと思いますが、Hさんは結果的に逮捕されて当クリニックとつながれて良かったですよね。物事の見方や考え方、被害者や人生のあり方について、改めてじっくり向き合うことができたみたいですからね。

H そう思います。本当に運が良かったと思っています。もしあのとき捕まっていなかったら、「ツイてる」 「俺は大丈夫なんだ」というさらに重度の認知の歪みが形成されて盗撮行為を繰り返していたと思います。最初の逮捕で治療につながって盗撮行為を断つことができたのは幸運でした。

斉藤 何がいちばん変わりました?

H 治療プログラムを受けて変わったのは、マイナスの悪い気持ちにならない生活を心がけ、人生に前向きになれたことです。それまでは、あと数十年会社勤めをこなして家にお金を入れて、趣味も楽しみもなく適当に生きていればいいやと思っていました。でも、持病の手術を機に禁煙したこともあって、それまでは特になかった「やりたいこと」が思いつくようになりました。クリニックとつながれて本当によかったです。以前のように昼間から酒を飲んで盗撮していたころよりも、今の生活のほうが充実していて緊張感があります。

 もともと生来の衝動性の高さや、のめり込みやすい勉強熱心な性格もあり、かねてからの性癖だった「素人投稿雑誌」の再現を求めて盗撮に耽溺してしまったHさん。逮捕を機に当クリニックとつながり、再発防止プログラムで盗撮するヒマを持て余さないようなタイムマネジメントを心がけるように。すると、やりたいこともなく漫然と暮らしていた生活にハリが生まれ、人生にも前向きになれたと言います。彼に必要だったのは、問題行動に代わる生きがいや、やりがいだったようです。

 

 学ぶことに貪欲なHさんには、これからも治療の柱の一つである「加害行為に責任を取る」という視点を忘れずに、盗撮を「やめ続ける」ことを実践していってほしいです。

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盗撮をやめられない男たち

斉藤 章佳

扶桑社

2021年9月2日 発売

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