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 また、人は意外と他人のことにそれほど関心をもっていないものだけど、どうしても他人の目が気になるのが人間だよ。しかし、そんなものにとらわれていたら何もできやしない。失敗しようが成功しようが、誰にどう思われようと、己の感性に従い、「知ったこっちゃない」の精神で、他人の目はおろか、自分の目も気にせず生きていくのがいいんじゃないか。これも、1つの「捌き」だよ。

不安は伝播する

 でも、「たいしたことない」「知ったこっちゃない」と思って生きているのは、そういう体験した者の強みや自意識過剰への対抗策としての意味合いだけじゃないんだ。

 たとえば、心配事を抱えた相手に、よかれと思って同調したり優しくしたりすると逆に、相手の中の心配がどんどん膨らんでいってしまうということがあるんだ。

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 俺が心配ばっかりしていたら、周りにそういう雰囲気が伝播して広がり、家族にも“心配の空気”が伝わってしまう。

 なんとなくそういうのは見えるじゃない? そうやって意図せず、“心配の空気”を流行らせてしまうんだ。人はつながっている。

 だから、まず自分のところで食い止めようと思っている。「俺ならこんなことぐらいどうってことないよ、たいしたことないよ」「知ったこっちゃないよ」って言っておけば、周りに広がらないで済む。

 何か妙なことが起こったら、自分も一緒になって怖がるんじゃなくて、それはそれ、自分は違う生きざまをすればいいって思い切ればいいんだ。

 100人全員が肯定しても、自分はおかしいと違和感を抱いたなら、自分は別の道を行くっていう勇気も大切なんだ。

 いいです、自分は1人で生きていきますよって。

「神経質じゃない敏感さ」

 思考とか知識って役に立つときもあるんだけど、ときに人の正常な判断を惑わすもの。

 防災グッズを買い集めた彼女だって、知識があるらしき人から「備えたほうがいいよ」って言われて用意しているうちに、逆に不安になっちゃった。

 備えたら不安がなくなるならいいじゃないですか。でも実際は裏目に出ることは往々にしてあるんだ。

 ただ、災害やトラブルに対する危機察知・危機管理ということにおいて、鈍感であるというのもまた問題ではある。

 彼女の場合、お客さんにあおられてのことだったけど、きっかけはともかく、危機に対して、いち早く勘づける感性の鋭さは生きていくうえで必要。結局、「神経質じゃない敏感さ」というのが大事なんだよな。

瞬間は勘と愛なり

桜井章一

さくら舎

2021年8月6日 発売