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「結局“神経質じゃない敏感さ”が大事」裏麻雀20年間無敗の男…“雀鬼”桜井章一が語った“心配事”との向き合い方

『瞬間は勘と愛なり 混迷の時代を生き抜く力』より

2021/09/03
note

 なぜ給料をもらわなかったかを改めていうと、貨幣という価値観の中に、自分自身を置きたくなかったから。自分を“売り”たくなかったんだ。

 売春婦って賤しい職業のようにいわれることが多いけど、サラリーマンも同じだよ。もちろん全てのサラリーマンがそうだというわけではないけど、身も心も捧げて仕事している人はけっこういる。自分らしさを失ってしまうほどに、自分を売って働いているんだ。

 資本主義の世の中だからお金が重要なのはそうなんだけれど、自分を失ってまでってどうなんだろうという思いがある。

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防災グッズを集めているうちに、不安が押し寄せてくる

 これもまた、うちの道場の女の子の話なんだけどさ、その子が働いているお店のお客さんから、「震災に備えて準備しておいたほうがいいよ」と熱心に勧められたというんだ。

 震災に対して不安に思う気持ちがないわけではない。念のためと、その子は100円ショップで防災グッズを買い揃えて、「備えあれば憂いなし」ということでいいだろう、としていた。

 けれど、防災グッズを集めているうちに、不安がどんどん押し寄せてきて、もっと買い揃えなきゃと気を病んでしまいそうになったというんだ。

 不安だから用意しておこうと思ったのに、用意しているうちに不安が増えていくなんて皮肉だよな。

©️iStock.com

 率直に人間的な現象だなって思う。

 たとえば何かの病気になったとする。

 実際、俺も病気を患っているんだけど、もし医学書なんかで病気を詳しく調べていったら、気が病を呼ぶじゃないけど、気をもっていかれちゃう。

 だから、自分が何の病気か知らないし、知ろうともしていない。

 心臓いじくりましたとか、胆のうをとったとか、そういうことはわかるけど、本来の病気の名前なんてわからない。7年病院に通っていて、いまだに。

 何の薬を飲んでいるかもわからない。それぐらいでいいんじゃないのって。もうめんどくさいから病院も行かないし、薬を飲むのやめようかなって思う時もある。

 生命保険とかバンバン入る人っているじゃないですか、入らない人はまったく入らないんだけど。俺も保険は大っ嫌いでね。何も入っていない。うちの奥さんが入っちゃっているんだけど(笑)。