8月26日、アフガニスタンの首都カブールの空港近くで、複数の爆発が起きた。少なくとも70人が死亡、140人以上が負傷したと報じられている。米軍も被害を負っており、13人が死亡、18人が負傷している。アメリカ中央軍はIS系組織の戦闘員とみられる2人による自爆テロだったと説明しており、IS系組織も犯行を認める声明を出している。

テロ被害者が搬送された病院の前で抱き合う少年たち ©getty

 アフガニスタンの今後はどうなるのか――。その先行きは極めて不透明だ。ほぼ全土を制圧したタリバンが新政権を運営するのは確定的だが、そのタリバンの統治方針がまだ不明だからだ。

 現在、タリバンの対外広報を取り仕切っている政治部門の報道担当者たちは、「旧政権の関係者含めて全員を恩赦する」ことや、「イスラム法の範囲内で、女性の権利を尊重する」ことを公式に表明しており、諸外国の大使館やNGOにも留まってほしいと呼びかけている。現在のタリバンはソフトな政権だとのアピールだが、その一方では、タリバン兵士による暴力や抑圧の情報も漏れ伝わってきている。

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国外脱出を求めて、カブールの空港に集う人々 ©getty

 こうした現状で、20年前までのタリバン政権の残虐ぶりを知る国民や国際社会には、現在のタリバン政権のソフト路線に懐疑的な声は多い。

水面下で複雑な駆け引きを行う“武将”

 しかし、新政権が本当はどう動くのかは、実のところまだ誰にもわからない。

 それどころか、タリバン指導部内でもまだ方針が決まっていない可能性もある。タリバン内にもさまざまな勢力があり、それぞれ考えは違うだろう。ただし、タリバン指導部の内情は一切外に出ていないので、どういう状況かは不明だ。

 さらに、タリバンに放逐された旧政権サイドにも、いろいろな動きがある。現在、主な抵抗勢力は北東部のパンジシール渓谷などに集結し、徹底抗戦の構えを見せている。また旧政権の要人には、タリバンとの交渉の道を探っている人物もいる。

 この国を今後、タリバンが支配するのは確定しているが、現在の不透明な流れのなかで、同国内のさまざまな有力者たちが、自らのサバイバルや主導権を賭けて、水面下で複雑な駆け引きを行っている段階だといえる。この権力闘争によって、アフガニスタンの命運が決まる。事と次第によっては、国内で虐殺が繰り広げられたり、諸外国へのテロ行為が凶悪化するなど、“最悪の事態”が起きてしまうこともある。

 まさに日本の戦国時代末期のような様相だが、そこで重要なのは、いわば戦国武将のような各有力者が今後、どう動くかということだ。アフガニスタンの今後を見通すには、情勢のカギを握る“武将”たちに注目すべきだろう。

穏健派から過激派まで タリバン側のキーマン

① 姿を見せない謎のタリバン最高指導者
 ハイバトゥラー・アクンザダ 

アフガン・イスラム通信がハイバトゥラ・アクンザダ師として配信した写真

 タリバンのトップである最高指導者。もともとイスラム法学者で、タリバン内でイスラム法廷責任者を長く務め、タリバン創設者でカリスマ指導者だった故ムハマド・オマルの宗教顧問として重責を担った。

 オマル死後に前任の2代目最高指導者の下で副指導者となったが、前任者が2016年に米軍に殺害された後、3代目の最高指導者に選出された。当時、タリバン内には複雑な派閥対立があったが、そのバランスの上で軍事指導者ではなく宗教指導者のアクンザダが前任者にすでに内々に後継者に指名されており、そのまま選出されたという。