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《自爆テロで死傷者200人超》アフガニスタンの命運を握る“8人の男たち”「彼らの権力闘争次第で『最悪の事態』も」

《自爆テロで死傷者200人超》アフガニスタンの命運を握る“8人の男たち”「彼らの権力闘争次第で『最悪の事態』も」

2021/08/27
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FBIが警戒する「最凶の実力者」

③タリバン最凶の実力者
 シラジュディン・ハッカニ 

シラジュディン・ハッカニ(FBI公式サイトより)

 タリバン指導部に3人いる副指導者の1人。3人のなかでも、最強硬派と推測される。

 タリバンはいくつもの地元武装部族集団の結合体だが、その中でも強力な「ハッカニ・ネットワーク」を率いる。ハッカニ・ネットワークはアフガニスタン南東部からパキスタン北西部を拠点としており、パキスタン軍情報機関との関係が深い。もともとはシラジュディンの父親が率い、数々のテロを行ってきた。米国はタリバンとは別にテロ組織指定しており、ハッカニをテロ容疑者手配している。報奨金は最高500万ドルだ。

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 ハッカニはタリバンでももっとも強力な兵力をもつ戦闘指揮官でもあり、タリバン指導部でも影響力の強い副指導者でもある。タリバンには他にも有力な戦闘指揮官や部族指導者がいるが、その中でもハッカニの動向が大きな影響力を持つだろう。

④カリスマ指導者の息子でタリバン軍事部門総責任者
 ムハマド・ヤクーブ
 

 副指導者の1人。カリスマ的指導者だったタリバン創設者のムハマド・オマルの息子。

 血統からタリバン内に支持者が多く、第2代や第3代の最高指導者の選出時でも名前が挙がったが、年齢が若いことから見送られたという。現在でも30~31歳とみられる。

 2020年、タリバンの正式な軍事部門総責任者に就任した。タリバン指導部内では、ハッカニらの強硬派と対立しているとの見方もあるが、詳しいことは不明である。なお、これまで一切、本人の写真も撮られていない謎の人物でもある。

反タリバン勢力の若きカリスマ、老練の政治家

⑤反タリバン軍を率いる若きカリスマ司令官の息子
 アフマド・マスード 

アフマド・マスード ©getty

 タリバンと現在も戦っている抵抗勢力「アフガニスタン国民抵抗戦線(NRFA)」(通称「パンジシール抵抗軍」または「第2抵抗軍」)の中心的人物。北東部の峻険な要害であるパンジシール渓谷を拠点とする。

 現在31~32歳と年齢は若いが、タジク人の戦闘指揮官として名高かった故アフマド・シャー・マスードの息子であり、父の後継者として地元では大きな影響力がある。

 彼はもともと旧政権がタリバンに対して行っていた交渉にも反対してきた。地元で対タリバンの抵抗軍を創設していたが、タリバンがカブールを占領した後、旧政権の要人や部隊が抵抗軍に参入。その主力を率いる司令官になっている。

 旗下の兵力は6000人とも8000人とも2万人ともいわれて実態が不明だが、いずれにせよその程度の兵力では、もはやタリバンを倒すことは不可能だ。しかし、パンジシール渓谷の防御力はきわめて高く、タリバンに簡単に制圧されることも考えにくい。現在、タリバンの侵攻に対して徹底抗戦を掲げているが、攻めあぐねているタリバンと政治的な和平条件をめぐって交渉中とみられる。