反タリバン運動の中心人物の一人
⑥暫定大統領を宣言した旧政権の副大統領
アムルッラー・サーレ
旧政権の第1副大統領。ガニ大統領の国外逃亡を受けて、正統な暫定大統領を名乗る。現在、パンジシール渓谷の抵抗軍に合流している。
もともとパンジシール渓谷出身のタジク人で、前出のカリスマ的ゲリラ司令官だった故アフマド・シャー・マスードの部下として活動し、2001年のタリバン政権放逐後に、カルザイ政権で情報機関「国家安全保障局」(NDS)長官を務めた。
その後、カルザイ大統領と衝突して辞任。反タリバン運動の中心人物の1人となったが、ガニ政権下で復権し、内務相、副大統領を歴任した。
現在、反タリバン派の旧政権側要人として、その動向が注目されている。
アメリカを背負った旧政権陣営の仲介役
⑦今もタリバンとの交渉を進める旧政権高官
アブドラ・アブドラ
旧政権で外相、行政長官(首相に相当)などを歴任し、ガニ大統領のライバル的存在だった。2020年に国家和解高等評議会議長に就任し、タリバンとの和平交渉を主導した。
現在も旧政権の要人として、タリバン政治部門との交渉を継続中。もちろん今はタリバンが主導権を握っているが、政治的駆け引きによる衝突回避に動いている。
⑧タリバンとの交渉に名乗りを上げた元大統領
ハミド・カルザイ
旧政権の元大統領。パシュトゥーン人の有力部族に連なる家系で、タリバン側に人脈的な繋がりもある。
以前のタリバン政権が米軍によって放逐された後、米国の後押しで大統領に就任。2014年まで務めた。今回、タリバンによるカブール制圧を受け、前出のアブドラ国家和解高等評議会議長とともにタリバンとの交渉窓口となる調整評議会を設置。実際にタリバン幹部と接触している。
混迷を極めるアフガンの読み解き方
以上が、アフガニスタンの今後を予測するにあたって、まずその動向をフォローすべき8人のキーマンたちだ。さらに、タリバン側には他にも有力者がいて、今後は新政権の要職に就いていくだろう。そうした人物たちのそれぞれの人脈と背景も、今後のタリバンの動きを予測するうえで重要な“情報”になる。
現時点ではとにかくタリバンの内部事情が外部からはまったく窺えず、情勢の分析がきわめて困難になっている。しかし、前述したように各人がサバイバルと主導権を賭けて、激しい駆け引きを行なっており、その主役である“人”の繋がり、関係性を読み解く作業はきわめて重要といえる。