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「若い子には小説が本屋で売っていると分かっていない人もいるけど…」 動画クリエイターけんごさんが、小説紹介を“ビジネス”にしない理由

けんご@小説紹介さんインタビュー#2

note

若い子には、小説が本屋に売っていることを分かっていない人もいる

──月に20冊くらい読んでいるとおっしゃっていましたが、読書時間はどうやって捻出されているのですか。

けんご それ、よく質問でも聞かれます。僕は朝1時間と夜1時間を読書の時間と決めて、あとは移動中とかちょっとしたすき間時間に本を読んでいるんですが、「毎日本を読む」ことって、本を読む習慣のない人にとっては結構ヘビーだと思うんです。なので、「本を読みたいけれど時間が取れない」という方には、小学校の朝の会とかでやっていた「10分読書」みたいに、1日10分でいいからはじめてみたら? とお伝えしています。

 若者の読書離れが言われていますが、そもそも今の若い子の中には、小説が本屋に売っているということすら分かっていない人もいるんですよ。TikTokのコメント欄で「この作品どこに売ってますか?」と聞かれた時は僕もびっくりしたんですが、「本屋さん」という意識が頭から抜けている子が多いんだなというのは感じました。

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 僕自身もそうでしたが、漫画とか、映画とかに比べて小説は文章だけだから重いと思い込んでいる人はたくさんいるはずなんですよ。あとはきっかけがない。面白い作品はたくさんあるけど、その作品を知らないから読みたいと思わない。そういう子たちが、僕の動画をきっかけに本を読んでくれたら嬉しいですね。

 

若者に人気の作品を年配の方に読んでほしいと

──書店の店頭で流す紹介動画の作成もはじめたとお聞きしましたが、こちらはTikTokの紹介動画とは違うものですか?

けんご これは書店さんとのタイアップなので基本的にはPRなんですが、僕の大好きな作家さんの作品紹介だったのでお受けしました。未来屋書店さん限定で2月に店頭で流す作品紹介動画をつくらせていただいたのですが、大きな反響があって別の出版社さんでもご一緒することになりました。

 店頭でこの動画を見て実際に本を手に取ってくださる方が多かったそうなんですが、中高生向けの恋愛と青春モノにも関わらず、ご年配の方が「気になったから」と買ってくださったと聞いて嬉しかったです。

 筒井康隆さんの作品が若者にも読まれたように、TikTokにあげる動画では、逆に若者に人気の高い作家さんの作品を年配の方にも読んでほしいと意識し始めるようになりました。昔の小説が読まれずに置かれるのももったいないですが、年代で読む本がわかれるのは、もっともったいないじゃないですか。

 SNSは流行廃りが激しい世界ですから、1年後には僕自身がまったく忘れられているという可能性もあるので、SNSで生き残っているうちに1冊でも多くの作品をバズらせる、そして多くの方に手に取っていただき、重版を実現させていきたいなと思っています。