1ページ目から読む
3/4ページ目

 くも膜下出血の手術は2種類。ひとつは開頭して患部をクリップでパチンと留める手術(クリッピング法)、もうひとつは血管内手術(コイル法)です。

 私が受けたのはコイル法。脚の付け根の動脈から、レントゲンの画像を見ながら、心臓を経由して脳の患部まで、延々と管を通していきます。管が脳動脈瘤まで届くと、形状記憶合金のプラチナを毛糸玉のように押しこんで、患部を塞ぐというものです。

レントゲンの造影剤で脳梗塞に

 手術が成功しても安心できないのが、くも膜下出血の治療の難しさです。

ADVERTISEMENT

「治療―検査―病状説明紙」を見ると、私の症状は「くも膜下出血、脳動脈瘤破裂、コイル塞栓術後脳血管攣縮」と書いてあります。

 私は、レントゲン撮影で使う造影剤の刺激によって脳血管が攣縮し、脳梗塞を発症していました。左脳の4分の1がダメージを受け、言語と右手の機能に大きな障害が出ました。

©iStock.com

 障害が出た私について、旦那は日記の中でこう書いています。

《12月10日(木) ICUへ。人工呼吸器を外したのでしゃべれるようになったが、出てくる言葉は「お母さん」と「わかんない」の2語のみ。それでも不思議なことに話が弾み、重症患者ばかりのICUでふたりでゲラゲラ笑ってしまう。右足は動かせるようだが、右手は難しいようだ。》

右半身(特に右手)と言語に障害が残る

《12月13日(日) 私の言うことをある程度理解していることは間違いない。口に出すことができないだけだ。脳とは不思議なもので「えーとね」「ちょっと待って」「昨日」と言えるようになった。語彙が増えているのだ。》

 12月15日に旦那が岸田秀先生(『ものぐさ精神分析』の著者。先生も脳梗塞で手術した経験あり)に出したメールが興味深いので引用しましょう。

《手術は神業のようにうまくいったのですが、レントゲンを撮るための造影剤が刺激になり、手術箇所とはまったく別のところが脳梗塞になり、左脳の四分の一がダメージをうけてしまいました。