いつのまにか舞台の隅にいる私はどんどん膨らんでいきます。見れば私と同じように膨らんだ人たちが熱気球のようになってたくさん浮いています。
「もしかすると、これが墓場なのかもしれない。私はバランスボールみたいに膨らんで死んでいくのか!」とゾッとしました。
するといきなりドアが開き、看護師さんが入ってきて、私の乗っているストレッチャーごとダッシュで部屋から脱出。私の身体はみるみるしぼんでいきました。
目が覚めると旦那がいました。
おおっ、これは現実だ
手術当日から4日後の朝、ICUにお見舞いにきた旦那は、私と目が合った時のことを日記に書いています。
《12月8日(火) 脳を休めるために使っていた鎮静剤を止めたので、見舞いに行くと目を覚ました。すでに左脳の4分の1が死んでいて、言語中枢その他に障害が出ることは覚悟していた。だが、彼女を見てすぐにわかった。私のことを認識している! 私はうれしくて泣いた。私の涙を見て、彼女も泣いた。》
おおっ、これは現実だ。
私は呼吸状態を管理するために気管内挿管、つまり人工呼吸器のパイプを突っ込まれていてしゃべれないし、集中治療室の中なのに、何だかビニールで囲まれていた。でも夢ではない! しかし、なぜか旦那の目は4つになっていました。私の目のピントが合っていなかっただけですが。
私が3日間寝てる間、旦那は大忙しでした。
当時、子供は中学1年生と小学2年生だったので、炊事・洗濯・掃除をすべてやり、私のお見舞いも毎日行かなくてはいけません。さぞかし大変だったでしょう。
くも膜下出血の手術は二種類
ここで、私が受けた手術の流れを解説しましょう。
くも膜下出血は脳内の動脈が破裂して、血液が脳漿(脳を満たす液体)に混ざり込む病気です。脳には常に新鮮な脳漿が流れ込み、排水される仕組みになっていますが、脳漿に血液が混ざると排水がうまくいかなくなります。水がどんどん入ってくるのに出て行くことができなければ、脳は水圧で圧迫され、様々な障害が出ます。これが水頭症です。