「早期教育の幻想ってありますよね。幼いうちに少しでもリードしておこうと思うのでしょうけれど、幼児のころに多少他人より先に進んでいても、そのうちその差は消滅します。大人になって役立つスキルを早く身につけることよりも、何かに夢中になる感覚を経験することの意味のほうが大きいと思います」と言うのは武蔵高等学校中学校の高野橋雅之先生。
鷗友学園女子中学高等学校の大内まどか先生は「どんなことを学んだって、その先にいろんな新しい世界が広がるわけですから、中高生のうちは損得勘定なんてしないで、自分が純粋に没頭できるものに集中すべきです」と言います。
子どもの目の輝きに「いいね!」する
拙著『正解がない時代の親たちへ』(祥伝社)の執筆のために、私は22の名門校の32人のベテラン先生たちに、いまどきの親御さんへのアドバイスを聞いて回りました。
大事なのは子どもをしっかり見てあげることだと先生たちは口をそろえていました。ただ視界のなかに見えているだけではダメです。子どもが何に対し、どんな関心を寄せていて、いまどんなふうに心が動いているのかを見るのです。
たとえば幼児が公園で遊んでいて小さなイモムシを見つけたとします。すると子どもの目が一瞬輝きます。その瞬間のその表情を見逃さないでほしいのです。
さらに子どもがその感動を親に伝えたいとき、必ず一瞬親のほうを見ます。そのときに、子どもの感動に共感しながら、アイコンタクトを返してあげてほしいのです。
「ママ(パパ)みて!」と声をかけられれば「よくみつけたね」とか「かわいいね」と返事してあげてもいいでしょう。でも感情のこもったアイコンタクトだけでも十分です。あえて言葉にしないほうがいいときもある。
そんなときにスマホをのぞき込んで芸能人のインスタに「いいね」なんてしている場合じゃありません。目の前の子どもにリアル「いいね」を出してあげてほしいのです。
そうすると、子どもの好奇心は励まされ、どんどん知的欲求が豊かになり、自分の感覚にも自信がもてるようになります。これが、その子の自己肯定感を励ますことになりますし、スペシャリティを伸ばすための恰好の養分にもなります。