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――オーディションは100回近く受けたと聞きました。

森口 100回は大袈裟ですけど(笑)、いいところまでは行くんです。でもあまりに落ち続けて、中学生の頃の日記はほとんどポエムになっていました。「夢のパスポートは持っています、でも中途半端なパスポート」とか「神様、わからなくなってきました。私は夢があるからがんばれているのか、夢に苦しめられているのか。どっちなんですか」とか(笑)。それでも、いつか私のことを認めてくれる審査員と出会えると信じて受け続けていましたね。「歌手になりたい」ではなく「なる」と!!

「水の星っていう意味わかる?」「水星?」

――夢が叶って、17歳だった1985年に「機動戦士Zガンダム」の「水の星へ愛をこめて」でデビューされました。

森口 NHKの「勝ち抜き歌謡天国」という歌番組に出た時に、レコード会社の方が「ガンダムの主題歌のオーディション受けて見ませんか?」と声を掛けてくれたんです。それで受けたら「声がすごくよかった」とキングレコードのディレクターの方にスカウトしていただいて、そこからは早かったですね。5月にオーディションを受けて6月にレコーディング、7月に上京して8月にはデビューでした。最初はあっという間すぎて騙されてるんじゃないかと思いましたね(笑)。

森口博子さん ©文藝春秋 撮影・三宅史郎

――そんなに急なスケジュールだったのですね。

森口 はい。福岡の高校にまだ通いながら、レコーディングしました。そのレコーディングの時、ディレクターさんに「この曲は上手に歌おうと思わなくていいからね。言葉を大切に語尾を大事に歌ってほしい。君が大人になって、何十年たっても歌える歌だから」と言われたのを今でも覚えています。私は「タイトルの水の星っていう意味わかる?」と聞かれて、「水星?」と答えるような状態だったんですが、「地球だよ」と本当にやさしく教えてくださって。その方は40代で亡くなられてしまったんですが、今もこの曲を歌うたびに思い出すんです。

――「水の星へ愛をこめて」はガンダム40周年を記念したNHK「発表!全ガンダム大投票」のガンダムソングスで1位にもなりました。

森口 これまでの主題歌361曲以上もあったガンダムソングの中から、この曲を1位に選んでいただいて、魂が震えるほど嬉しかったです。35年間大事に歌ってきて本当によかったです。ここ数年、さいたまスーパーアリーナや東京ドーム、台湾で行った「KING SUPER LIVE」で披露した時のファンの皆さんの熱い歓喜、忘れられません。あの時ディレクターさんに言われた言葉はやっぱり本当だったんです。言霊を感じています。