1ページ目から読む
4/5ページ目
「どんな店にするか」が定まらない
実は50代に入ってから私は、定期的に通帳や年金定期便をひっくり返し、電卓を叩いては、一体自分はいくらあればやっていけるのか、繰り返し算出していた。
老後の二文字も時折頭をかすめていたし。
一人娘は結婚し、住宅ローンも完済。毎日の生活は基本的に机に向かうことが多く、イギリス行きや地方への遠出もほとんどが仕事を兼ねたもの。ホリデーを満喫するのはもっと先のことだろうし、格安チケットで数日の里帰りができればいい。
手元のお金は地元でカフェに行ったり、友人や娘と会って食事をする時に使うくらい。
もともと節約志向ゆえ、自著のタイトルではないが、「月収20万円の暮らし方」でやっていけるかなと、算段も立っていた。
けれど、店を始めるとなれば、家賃など月々の固定費ものしかかってくる。何もしなければ安パイなのに、下手したら貯金を崩して赤字を補塡と、老後崩壊にすり替わっては本末転倒だ。
何か妙案はないものか。そろばんを弾きながら悶々と考えた。
50代で何かを始める前提は、それが好きなことか、やりたいことか。それをするにあたって、儲けよりも無理がないかどうかだ。商いだから当然苦労も伴うだろうが、生活も店も成り立つ、お金を生むしくみが長く続けていくには必要だ。
お金についてつらつら考えるうち、店の運営形態をどうしたらいいかという疑問に突き当たった。店は個人でやるのか、法人化するのか。私が一人でやるのか、スタッフと「小さな英国展」のようにやるのか。
自分の中でそこがはっきり定まってなかったのだ。