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好きなことを「こっそり」やりたい

 出店する場所は吉祥寺以外考えられなかった。

 まず地元であり、商業地を歩き回り、町の様子が分かっていること。自宅から歩ける場所で働きたいという長年の夢も叶うこと。

 そして「小さな英国展」ですでに顔馴染みとなったお客さんにも分かりやすいなどポジティブな理由は山ほどあった。

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©️iStock.com

 問題は人気の町だけに空き店舗が少なく、家賃や保証金がべらぼうに高いという点だ。よって、賃料の安い物件を何としても見つけないと、収支が合わなくなる。

 そこにはもう一つ、気になる問題があった。

 吉祥寺は私の地元でもある。プライベートな町が仕事の舞台となれば、うまくいっても、失敗しても、あるいは閉店しても、やはり気を遣う。

 本音は好きなことをこっそりやりたい。祖父の金物屋でいたずらに鉛筆を売ったあの感動をもう一度味わいたかったのだ。

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