文春オンライン編集部が実施した「『東京2020オリンピック』は成功だった? 失敗だった?」アンケートでは、開会式・閉会式・競技・運営の4項目のうち、競技以外の3項目で「成功だった」と回答した人が20%を下回る結果でした。一方で先日行われたパラリンピックの開会式はSNSに「これが見たかった」「感動した」といった投稿が多数見られるなど、国内外から称賛が集まっています。
オリンピックとパラリンピックの違いはどこにあったのか。人々はどんな要素に反応したのか。演劇、音楽、ファッションなどのメインカルチャーからクラブ文化、ジェンダーまで幅広い分野に精通する湯山玲子氏に話を聞きました。
全世界の文化系が膝を打った選曲の妙
――パラリンピック開会式で一番反響が大きかったシーンから印象をお聞きしたいのですが、布袋寅泰氏が出演したバンドシーンを湯山さんはどうご覧になりましたか?
湯山 もうこれは、全世界の文化系が膝を打っただろう選曲の妙ですね。「キル・ビル」で有名なあの「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」という曲は、もともと邦画の「新・仁義なき戦い」に使われていたのを聴いたタランティーノ監督が気に入って使ったもの。YouTube時代にサウンドロゴ化しているほどのキャッチーな一曲がのっけからプレイされました。「キル・ビル」は「AKIRA」へのオマージュでもあり、世界を熱狂させた日本文化という本当のクールジャパンを象徴するような選曲だったと思います。
――その後「シュレック3」など色々なところで使われているので「あれ日本の曲だったんだ」と思った人も多そうです。
湯山 日本のカルチャーというとアニメ・マンガのイメージが強いですが、音楽ジャンルもYouYubeで俄然、世界の注目を集めています。最近では70~80年代の日本のシティポップが世界の音楽ファンの注目の的だったり。アップロードされた日本のポップス、ロック、歌謡曲にまで、日本語以外の絶賛コメントの嵐ですよ。布袋さんはそのスキルはもとより、ロックギタリストが持っている動きやビジュアルの格好良さを追求している人なので、そのスター然とした雰囲気も合わさって説得力ありましたね。
――布袋さんと一緒に登場した全盲のギタリストの田川ヒロアキさんや、手足に麻痺があるギタリストの川崎昭仁さん、高校生ベーシストのアヤコノさんという顔ぶれも新鮮でした。
湯山 彼らの演奏する姿からは、そもそもロックという音楽のDNAが社会や大人や既存の社会システムに抵抗する、モノ申す音楽だということを再認識させられました。彼らのグラムロック的なステージビジュアルは、過激にカッコ良かった。そもそも、ステージの上ではみんなが対等です。布袋さんと川崎さん、アヤコノさんのプレイの絡みは熱く密接でよろこびに満ちており、このようなコミュニケーションが健常者と障害者の間に実現していく社会について想いが飛んでいきました。