東京五輪でバスケットボール女子日本代表の快挙は日本中を興奮させた。身長差が最もパフォーマンスに現れると言われるバスケで、平均身長が176㎝と出場12か国のうちで2番目に低い日本が銀メダルを獲得。これまで開かずの門とされたベスト8の扉をスルリと潜り抜けただけでなく、コート上の5人が攻守に連動して動き、ライバルたちを置き去りにする姿は爽快だった。

©️JMPA

 そもそもほんの7年前、日本バスケットボール協会(JBA)は国際バスケットボール連盟(FIBA)から、国内男子リーグの分裂問題で国際資格(試合出場)停止という不名誉な処分を受けている。ガバナンスが欠けていた協会がほんの数年間で強固な組織として蘇り、オリンピック銀メダルというバスケ界初の栄誉も手にした。そこにどんな知恵や戦略があったのか。代表の強化に力を注いできた東野智弥JBA技術委員長に話を聞いた。なお、東野は銀メダルを獲得した車いすバスケでも、様々な形(コーチング、戦略アドバイザー)で監督の及川晋平氏をサポートしてきた。(全2回の1回目。後編を読む)

JBA技術委員長・東野智弥氏 ⒸJBA

一人一人の個性が花開き、それが束になって

 ちなみに日本は男女5人制、男女3人制(3x3)の4種目で五輪に出場。これはFIBA加盟213カ国で日本が唯一達成した快挙。強化成功の証でもある。

ADVERTISEMENT

 東野はバスケを語るとき、この上ない笑顔を見せる。バスケが好きでたまらないという熱い思いが、言葉の端々に滲む。

©️JMPA

「女子バスケの選手の頑張りには本当に感動しました。決勝では米国に負けましたけど、彼女たちの戦い方を見ているうちに、なぜかアーティスティックスイミング団体の演技が浮かんだんですよ。一人一人の個性が花開き、それが束になって、色とりどりの見事な花束になった。でも、水面下では懸命に水かきしているという…。彼女たちの努力には本当に頭が下がります」