今回の主役は、南武線である。
川崎駅から多摩川に沿って北西へ。南多摩~府中本町間に至ってようやく多摩川を渡り、東京の府中を経て立川駅を終点とする、あの通勤通学路線だ。
で、この南武線によく似た役割の3つの駅がある。武蔵小杉、武蔵溝ノ口、そして登戸である。武蔵小杉駅は東急東横線、武蔵溝ノ口駅は東急田園都市線(田園都市線は溝の口駅)、登戸駅は小田急線と交わっている。つまり、東京都心と南武線沿線を接続する、実に重要な役割を果たしている3兄弟というわけだ。
この3駅、実際に南武線の中における地位はダントツである。南武線各駅の乗車人員を見ると、1位は圧倒的に川崎駅なのはいいとして2位から4位が武蔵小杉(約8万9000人)・武蔵溝ノ口(約6万4000人)・登戸(約5万9000人)と続く。第5位が分倍河原駅(こちらも京王線との接続駅だ)の約3万1000人だから、3兄弟の存在感は圧倒的といっていい。
「登戸」には何がある?
ただ、3兄弟の末っ子たる登戸駅が問題なのだ。いや、南武線ユーザーはもとより小田急線ユーザーにとっては実に存在感の大きな駅だとは思う。しかし、武蔵小杉が天下のタワマンの森の中にあって、武蔵溝ノ口も二子玉川にもほど近い天下の田園都市線接続駅だ。
そうした中で、登戸はちょっと地味だ。小田急線が悪いわけではまったくないし、都心へのターミナルまでの所要時間は3兄弟いずれもたいして変わらない。ただ、タワマンもないし多摩川を渡っても楽天の本社もない。言われてみれば、何があるのかよくわからない乗換駅なのだ。
ちなみに、南武線には夕方から夜にかけてなど、登戸駅を終着とする電車がある。筆者は府中在住なもので、南武線で川崎や武蔵小杉あたりから帰ろうとするときに「登戸ゆき」がやってきて絶望することもしばしばだ。そういう意味で、登戸駅はナゾの、というか困りものの終着駅でもある。
そんなわけで、南武線3兄弟の中でいちばんナゾに溢れる登戸駅にやってきた。もちろん小田急線ではなく南武線でやってきた。