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「かつての存在感はない」「スーファミにも遠く及ばない」プレステ2に大苦戦したゲームキューブからなぜ“ゲームは変わった”のか《誕生20周年》

2021/09/12
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 さらに、当時業界を悩ませていたゲーム機の開発費の高騰問題についても、従来より低価格でより容易にソフトが開発できる点をアピールしていました。ゲームハードとしての総合的なデザイン性の高さ、ユーザーに愛されるソフト、開発目線から見た際の問題点の解決と、ゲームキューブはまさに、当時のゲーム機市場でトップを走っていたPlayStation勢に「追いつけ追い越せ」と登場したハードだったのです。

「かつての存在感はない」「ファミコンに遠く及ばない」ゲーム機史上に残る大ヒットハードPS2の壁はあまりに厚く…

 しかし、結果的にPS2との戦いは厳しいものとなりました。

 ゲームキューブ登場時、市場において任天堂は既にソニーの後塵を拝していました。期待された「64」は投入の遅れとソフト不足に加え、「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト」などのビッグタイトルを失った痛手を被り(当時は現在のように複数のハードから同じタイトルのゲームが出る時代ではありませんでした)、ソニーの初代PSに敗れてファミコン時代からの“業界王座”から陥落していました。

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2001年9月14日、都内で発売をアナウンスする様子 ©AFLO

 ゲームキューブに課せられた命題は、もちろん“王座”の奪還でした。しかしビジネスで一度失った優位性を取り戻すのは至難の業。任天堂の強気の発言がゲームキューブの発売前後にはメディアに掲載されましたが、1社で市場シェアの7割を占めてしまうほどの圧倒的なPS勢の売れ行きを前に、「とはいえ流石に難しい」というのがほぼ共通の意見だったように思います。実際、2005年の経済誌では総括的にこんな厳しい指摘がなされていました。

「ファミコンで社会現象まで起こした据置型においては、かつての存在感はない。現行機ゲームキューブの累計販売台数は1850万台(3月末)にすぎず、6000万台以上売った初代ファミコンや2代目のスーパーファミコン(累計4910万台)に遠く及ばない。1億台が目前のPS2とは大差をつけられ、北米市場ではXboxにも累計販売台数で逆転された」(週刊東洋経済 第5966号(2005.07.02))