SNSいじめ、ゲーム依存、性被害……。子どものスマホ利用の実態はどうなっているのか。ジャーナリスト・石川結貴による『スマホ危機 親子の克服術』(文藝春秋)から一部抜粋して、子どものスマホ問題を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

◆◆◆

リアルな体験を告白する動画に自分を重ねる

 SNSやオンラインゲーム以上に子どもの関心を集めているのは、ユーチューブをはじめとする動画投稿サイトだ。

ADVERTISEMENT

 学研教育総合研究所の『小学生白書』(2019年)によると、小学生男子が将来つきたい職業の第1位は「ユーチューバー」。自作の動画を投稿、公開することで広告収入を得る職業で、トップクラスでは数億円を稼ぐと言われている。

 それだけ視聴者数が多いわけだが、では子どもたちはどんな動画を見ているのか。『小学生白書』(2018年)によると、小学生の視聴ジャンルは「アニメ」44.7%、「コメディ」32.7%、「ゲーム実況」28.2%、「キッズ」(子ども向け動画)23.9%、「音楽」19%で、1日の視聴時間は平均40分だ。

©iStock.com

 一方、中高生など10代では視聴動向が変わってくる。ネットリサーチ事業を展開するテスティーの『YouTuberに関する調査』(2020年版)では、10代男性の第1位は「ゲーム実況」68.5%、同女性は「美容・ファッション」49.2%だ。

 プロの手で編集された映画やテレビ番組と違い、一般人が投稿した動画では失敗などのリアルな状況がそのまま公開されることも多い。たとえばゲームで遊ぶ様子を配信する「ゲーム実況」なら、対戦相手に完敗する様子や、ボイスチャットの生々しいやりとりがあったりする。視聴者にすれば予想外の展開に驚いたり、自分と重ね合わせて楽しめたりする。

 高校1年生の麻実さんはコロナ自粛以降、自宅でユーチューブを見る時間が大幅に増えたという。音楽やお笑い系のライブ配信、アニメ動画などを視聴してきたが、ここ最近ハマっているのが「告白動画」だ。

「失恋したとか、お金がないとか、個人の打ち明け話もあるけど、ダントツでおもしろいのは美容整形の告白動画です。一般人の女子が、整形前、手術中、入院生活、退院後という感じで、リアルな顔出しをするんです。術後の様子とかをイッキ見して、友達とSNSで盛り上がる。『傷が怖い』、『腫れがすごい』って、もう祭り状態(みんなと一緒に盛り上がる)ですよ」

 整形前後の変化だけでなく、かかった費用や周囲の反応まで明かされる。プライバシーを切り売りするような動画だが、意外にも麻実さんは「応援したくなる」と言う。

「自分の素を晒して、明るく生きるためにがんばってるわけでしょ? 私や友達が祭り状態になるのは、告白動画に自分を重ねるからだと思います。自分じゃできないけど、この人すごいよ、って感じでつい見たくなる。ありのままの姿に勇気をもらえるんです」