もちろん、ビジョナリーなリーダーと伴走するのは本当に大変です。通常運転のままでは、ジャックが2030年に到達したいと思っている世界観には到達しない。社内の意識を変え、ギアを上げるという意味で、ツイッタージャパンではあえて「今は第二創成期である」という言葉を使っているほどです。
CEOの資質その2:プリンシプルを持っていること
もうひとつ、ジャックがすごいのは「正しいことをやる」という軸がぶれないことです。ツイッター社は上場企業なので当然、市場や株主から収益や成長を求められます。ジャックはそれでも「正しさ」を優先します。
例えば、2019年には他のSNSに先駆けて「世界中で政治広告を禁止する」という方針を打ち出しました。背景には、アメリカ大統領選挙をはじめとして、ソーシャル業界で有料広告を使った操作ともいえるような行為が問題になっていたことがありました。
もちろん、単純に収益のことだけを考えれば、幅広く広告を出してもらった方がいいわけです。それでも、ジャックはいち早くやめる、という決断を下しました。「世の中をごまかしてはいけない」「我々は正しいことをやる」という価値観がジャックをはじめとするツイッターのリーダーたちの中に強くあるからです。
ウォールストリートで上場している会社というのは成長を求められて、成長のためだったら何でもやるみたいなところがあるのですが、ツイッター社は真逆なところがあると、すごく感じます。たとえ収益を毀損したとしても正しいことをやる、という前提が崩れることは決してありません。
CEOの資質その3:チャーミングな人間性
今まで自分が転職するとき、その会社の経営陣がどういう人たちなのか、どういう仲間と仕事をするのかという点をすごく見ていました。中でも経営者にとって、人間的な魅力がいかに大事かを教えてくれたのはMTVのトム・フレストンでした。MTVのファウンダーではなく、もともとヒッピーみたいな生活をしていて、インドでTシャツの露天商をやっていた時に英字雑誌でMTVの求人を見つけて参画した、という変わった経歴の持ち主です。