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 これを簡潔にいえば、高齢者の基本的人権を尊重し、その人権を「護る」ために社会が「介入」することが、介護によって行われるべき支援であるといえるのではないでしょうか。

 いうまでもなく、基本的人権は、生まれながらにして誰もが持っているべき権利であり、社会生活を送るうえで重要なものです。

 それが、高齢者だからといって、守られなくていいというわけではありません。

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 しかし現状の介護支援では、そこが抜け落ちているケースによく出会います。

トイレにすら行けないのに、ほうっておかれる人たち

 在宅で介護をする場合、介護者が困りごとや負担に感じやすいのが、排泄の支援です。

 また、介護される人も、自身の尊厳にかかわると考えがちなため、できるだけ失敗しないつもりで頑張ります。

 そうした事情から、時として、トイレの介助支援がなおざりにされるケースがあります。

 こんなことがありました。

 東京都中野区にお住まいだった中川さん(80代女性・仮名)も、以前、そうした状況に置かれていたのです。

 中川さんは、廃用症候群(生活不活発病)の状態になっていました。

 廃用症候群とは、何らかの理由で長期間安静を続けることにより、身体機能の大幅な低下や精神状態に悪影響をもたらす症状のことです。

 具体的な症状としては、筋萎縮、拘縮(なんらかの原因で、関節が正常な範囲で動かせなくなってしまった状態)、骨萎縮などの運動器障がい、誤嚥性肺炎、心機能低下、血栓塞栓症などの循環・呼吸器障がい、うつ状態、せん妄、見当識障がいなどの自律神経・精神障がいが見られます。

立って歩くことができず、家の中は荒れ放題

 中川さんは、ご主人を亡くされた精神的ショックから何もやる気が起こらなくなり、ほとんどの時間を自宅の布団の上で過ごしていたために、廃用症候群になってしまったのです。

 その中川さんが私たちのデイサービスでリハビリを受けることになり、スタッフが車で自宅までお迎えにあがりました。

 中川さんのお宅に到着して、ドアを開けると、ご本人は這はうようにして玄関まで出てこられたのです。

 拘縮のせいで足首が動かず、立って歩くことができなくなっていました。

 そうした状態にもかかわらず、中川さんは一人暮らしを続けていたので、家の中は荒れ放題でした。

 お世辞にも、衛生的とはいえない環境です。

 何しろ自由に動けないので、必要なものもゴミも身の回りに一緒くたに置かれています。