少子高齢化が深刻化し、高齢化率が21%を超える「超高齢社会」を迎えた日本は、誰もが介護とは無縁ではいられない社会だ。しかし、介護についての有益な情報が広く知れ渡っているとは言い難い。

 ここでは、リハビリ専門デイサービス「リタポンテ」を運営する神戸利文氏、上村理絵氏による著書『道路を渡れない老人たち』(アスコム)の一部を抜粋。高齢者が幸せに生きるために大切な3つのポイントを紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)

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なぜ介護をする必要があるのか?

 ここからは、支援のやり方に相当な課題があるということについて、お話ししていけたらと思います。

 まず、前提として知っておいてほしいのが、残念ながら、日本は娯楽、福祉偏重型介護の介護後進国だということです。

 あれこれと、施策をほどこし、立派な建物や機器を揃えていますが、現状、体制、人材の育成の面で十分には整っていません。

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 本人の社会的な自立を後回しにした、一時的な家族の負担軽減のみを重視している短絡的な介護を提案され、それに従ったためにどんどんと身体が弱っていった方。

「今度また誤嚥性肺炎になったら生命の危険だ」という医師の意見に従って、胃ろうというお腹に小さな穴を開けて胃までチューブを通し、そこから栄養を摂る方法にして、食べる楽しみを奪われた方。

 もちろん、そのような処置をすれば、どうなるのかをきちんと理解したうえで、本人や家族が希望してそのような処置をしたのなら、それはそれでいいと思います。

介護は何のためにするのか

 しかし、どうなるかを知らずに、ケアマネジャーや医師が言ったとおりに実行して、事の重大さに後から気づき「これで良かったのか」と悩み、後悔しているケースも少なからず見受けられるのです。

 そもそも介護は、何のためにするのでしょうか?

 介護保険制度の大本となる1997年に成立した「介護保険法」の第一章、第一条にはこうあります。

「この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排泄、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。」