毎年のように発生する「もち」による窒息事故。2021(令和3)年は元日夕方までに、5人が救急搬送され、そのうち1人が死亡し、ほかの4人も心肺停止に陥った。なぜもちによる窒息事故は後を絶たないのか。そして、どうすればこうした事故を防げるのだろうか。

 リハビリ専門デイサービス「リタポンテ」代表の神戸利文氏、理学療法士として同社にてリハビリを提供する上村理絵氏の著書『道路を渡れない老人たち』(アスコム)の一部を抜粋し、紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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足腰だけじゃない、嚥下機能の低下を改善する

 歩行機能も大切ですが、噛んだり、飲み込んだり、ものを食べる機能も、非常に大切です。

 これらの機能も、ほかと同じく年齢とともに弱っていきますが、弱ったことになかなか気づきにくいのが特徴です。

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 突然ですが、30秒間でツバを3回飲み込んでみてください。

 もし、できなかったら、嚥下機能(物を飲み込む機能)が衰えている可能性が高いです。

 なぜ大切なのか。それは、人間の身体は、食べ物から栄養素をもらってできているからです。

 噛んだり飲んだりする機能が落ちることで、食べ物がうまく消化されず、栄養があまり吸収されなくなることもありますし、食べるのがつらくなるために量が減り、栄養が不十分になり健康を害している高齢者もたくさんいます。

85歳以上の女性は約3割が低栄養傾向

 厚生労働省が2019年に行った「国民健康・栄養調査」によると、65歳以上の低栄養傾向(BMI20以下)の割合は、16.8%(男性12.9%、女性20.7%)。さらに、85歳以上の女性は約3割が低栄養傾向にあるとあります。

 この飽食の日本において、飢餓状態の人がこれだけいるのです。

 だからこそ、私どもの施設には、STという口腔機能のリハビリテーションの専門職がいて、必要な方には、嚥下機能を低下させないリハビリも行うようにしています。