食品、調理器具、残飯、さまざまなゴミ……。
それらに混じって、使用済みの紙おむつがありました。
廃用症候群が進み、1人でトイレに行けなくなった中川さんは、介護用の紙おむつを使用され、それを漏れないように重ねばきをして、用を足していたのです。
症状の進み具合を見る限り、おそらく数カ月~数年もの間、中川さんは紙おむつを使い続けていたのでしょう。
この時点で私たちの施設に通うことになったのですから、中川さんが必ずしも孤立無援だったわけではありません。
介護の支援を担当するケアマネジャーがいなければ、デイサービスを利用することはできないからです。
リハビリの結果、自分でトイレに行けるように
正直、中川さん宅をお伺いし、初めてお話をお聞きしたとき、基本的人権が守られている状況には到底見えませんでした。
もちろん、いろいろな要素があったのかもしれませんが、適切な支援がなされていなかったのではないかという疑念はぬぐいさることはできません。
事実、中川さんは、この後、リハビリを懸命に取り組んだ結果、歩行器を使い立つことができるようになり、紙おむつは外せませんでしたが、自分でトイレに行けるようになったのです。
これは決して特別な例ではなく、長年介護支援に携わっていると、基本的人権を守るために支援をするという、重要な点が抜け落ちているケースによく出会います。
もちろん、そうせざるをえないケースもあるとは思いますが、トイレに行けなくなったからおむつをする。脚がふらついて転倒が怖いから、動かさない。そういったマニュアル化した短絡的な支援を提案する専門職が多いように見受けられます。
これはそのような場合に支援をするための人材、施設の体制や支援がしっかりと揃っていないからです。正しい情報の提供も十分ではありません。
これから徐々に改善していくのかもしれませんが、同じ日本で同じ介護保険で差異が出ることを、成熟期のこの国はどう考えているのでしょうか。
今がこのような状況だからこそ、日本は介護後進国であるという認識を持って、自分たちの幸せな老後を守るために、必要な情報、知識を身につけて予防していき、後悔しない人生の選択をするようにしていただきたいのです。
支援をとことん利用する意識
では、もっと具体的に、間違った介護支援で不幸にならないためにはどうすればいいか、話していきます。