コロナ禍2年目の現在、感染者数は依然として増え続け、マスク装着が日常化している。実は、それに伴って心配な“依存症”があるのだという。
「それは“だてマスク依存症”です。いまはマスクをすることが当然の世の中なので問題ありませんが、コロナが収束し、マスクをしなくてもいい日々が到来したとき、果たしてみんながみんなマスクを手放せるのか……。おそらく、一定数の人がだてマスク依存症になると思います」
こう語るのは、2011年に新書『[だてマスク]依存症』を上梓した、株式会社kikiwell代表取締役の菊本裕三さんだ。菊本さんは電話話し相手サービス「聞き上手倶楽部」を主宰し、これまで14000件にものぼる相談に耳を傾けてきた。
「だてマスク依存症とは、風邪でも花粉症でもなく、防寒の必要もないのに、常にマスクをしている状態のことです。私は有料の電話カウンセリングサービスを2006年に始めたのですが、相談者の中に“日常的にマスクをつけている”という人が2010年頃から増えてきたのです。その原因を探ったのが、この本です」
なぜ「だてマスク依存症」になるのか
アルコール依存症や薬物依存症などはよく知られる病名だが、“だてマスク依存症”はこの本のタイトルとして考案された言葉で、病名ではない。
では、「マスク依存」という言葉はいつ頃生まれたのだろうか。Googleトレンドで検索すると、初出は2008年12月となっている。そしてこの翌年、新型インフルエンザが世界的に大流行した。
「2009年の秋ごろから、新型インフルエンザ予防のために、マスクをつける人が急増しました。すると2010年の後半ごろから、首都圏を中心に日常的にマスクをつけている若者が現れ、やがて大人にも広がり、雑誌などで社会現象として注目されました。
自宅内でもマスクをはずさない人も
だてマスク依存者の話を聞いていると、彼らは初め、新型インフルや風邪、花粉症、防寒のためにマスクを使っていたのです。ところがある日、『マスクって使える!』と、本来の用途とは違う役割に気づく。そして、常時マスクをつけているのが居心地よくなり、はずさなくなるのです」
だてマスク依存者の中には、自宅内でもマスクをはずさない人もいるという。
「彼らがマスクをはずすのは、基本的に一人になったときだけ。食事中もマスクを耳にかけたまま、口の部分だけずらして食べる、今でいう“マスク会食”の先駆者もいました。食事以外ではずすのは入浴、睡眠時くらいで、他人と会う場所ではマスク必須。自宅で家族といるときもマスクを欠かせない、というケースもあります」