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 本来はマスクをつけなくてもいい場所でも、なぜはずせなくなるのだろうか。

マスクがはずせなくなる本当の理由

 菊本さんはだてマスク依存者の相談を聞くうちに、マスクと自分の安心感が結び付いたときに手放せなくなるケースが多いことに気づいた。

「だてマスク依存者たちにマスクをはずさない理由について聞き取り調査をしたところ、回答の多くは『外に出たくないから』、『表情を読まれたくないから』というものでした。そこに焦点を当てて話を聞くうちに、マスクは《心理的な壁》となるのではないか、という仮説にたどり着きました」

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 だてマスク依存者にとって、マスクをつけることによるメリットは実に大きいのだという。

※写真はイメージです ©iStock.com

「マスクをつけると、鼻からあごまで隠れます。口元は表情がとても出やすいパーツですが、マスクが1枚あれば、自分の気持ちや表情、唇の動きを他者に読まれずにすみ、自己発信を抑制できます。

 さらにマスクには、ダメージを防御、軽減する役割もあります。ダメージとは、他者からの叱責や罵詈雑言、注目などです。不愉快に感じる言葉や態度も、マスクが自分の《心理的な壁》となるため、安心感が得られるのです。

 マスクがあればこちらの本心を悟られない、また周囲からのダメージも減らせるとなれば、自分を守るアイテムのひとつとして、365日マスクをするようになります」

実はコロナ前に「だてマスク依存者」は減っていた?

 さて、世間でだてマスク依存者が注目されてから10年。コロナ禍の現在、さまざまなところで“マスク依存が増えつつある”という話が聞こえてくる。

 たとえば、医師専用コミュニティサイト「MedPeer」が昨年12月に医師会員を対象とした調査では、「今注意すべき新現代病」としてマスク依存症が2位にランクインし、『マスクがないと落ちつかない人の増加が目立つ』(一般内科・30代)という声を紹介している。

 化粧品会社・福美人が今年6月に全国の20~30代男女に行った調査では、「外出時のマスク着用」について、35.8%が『つけていないときの方が違和感があるくらい慣れた』と答えている。

 また、筆者の子供が通うある公立小学校の養護教諭は、こうした実感について語っていた。

「顔の半分を隠しておくことで安心感が生まれるのか、マスクを手放せなくなっている子供たちが見受けられるようになってきました。これまでにもマスク依存の子はときどきいたのですが、昨年のコロナ禍から、はずしてもいい場所でもマスクをはずさない子が増えたように感じます」