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鶴見辰吾に韓国人監督と俳優が敬意をもって接した理由

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 韓国で数々の映画賞を獲り、大ヒットした映画『密偵』が日本公開される。映画の舞台は1920年代の日本占領下の朝鮮半島。テーマは義烈団と日本警察との情報戦だ。唯一の日本人として出演した鶴見さんは朝鮮総督府警務局部長という黒幕を演じた。

「出演を決めたのは、韓国の名優ソン・ガンホさんと是非とも競演してみたいと思ったからです。同業者としても一目置く存在ですから」

 ソン・ガンホは『JSA』や『殺人の追憶』などで高い評価を得る韓国の国民的俳優。

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「初対面では立ち上がって礼をしてくれ、誠意を感じました。一緒に食事を囲むうちに、心の温かい素晴らしい方だという思いを強くしました」

 日本人俳優ぬきで複雑な時代背景を描くことは、映画としての説得力に欠ける。出演する鶴見さんに、監督も俳優陣も敬意をもって接した。

「時代や立場の違いがそれぞれにあります。みな自分の正義を持ち、なすべきことがある。その揺れ動く様を、私も彼らも俳優として表現しているのです」

 芸能生活40周年を迎えた鶴見さんがはまっているのは、ロードバイク。

「自転車に乗って地方に行くと、“どこから来たんですか?”などと驚かれ、親しく話しかけられる。滑稽なことをして、人を喜ばせたり、嬉しがらせるのが楽しいんですね」

 俳優はシャイな人が多い。脚本と役柄があって初めて、自由を得る。同じように、鶴見さんは、自転車を通して、親しみを演出しているのだろう。

INFORMATION

映画『密偵』
11月11日よりシネマート新宿ほか全国公開
http://mittei.ayapro.ne.jp/

鶴見辰吾に韓国人監督と俳優が敬意をもって接した理由

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