「全店長が難色」の玄米50%チャーハンがヒット
2番人気のチャーハン。耳を疑うのは、玄米を入れてからいっそう人気になった事実だ。
「私が推した玄米の導入は、100人近くいる店長たちのほぼ全員が難色を示しました。でも、テストで1軒に導入したところ好評。1年半ほどで全店が玄米を取り扱うようになったんです」
玄米が入ることで“パラパラ”にしやすく、玄米特有の香ばしさがチャーハンではプラスになった。
ちなみに定食などに付く茶碗入りのごはんは白米と玄米が選べ、およそ4割が玄米を選ぶ。ときに女性以上にカロリーを気にする、40代の男性にウケた。名物メニューの「ダブル餃子定食(650円)」を「玄米大盛り」で注文する人も多い。
朝のスープ作りを卒業し、出勤は開店30分前でOK
そして3番人気のラーメン。
そもそも、中華料理店はラーメンスープのために勤務時間が延びがちだ。
スープを作るには8時間も必要だし、朝7時から仕込んでも、一番おいしく仕上がるのは15時ごろ。最もお客さんが来ない時間帯にスープが最高の状態になる。しかもその日のスープは、その日に使い切らねばならない。
そんな矛盾を抱える作業にピリオドを打つべく、約30年前にスープ工場を建てる。酸化せずに日持ちして、かんたんに沸かしたての味を楽しめるスープが完成した。一つの袋が2キロ(約5杯分)で廃棄ロスは少なく、「スープが切れたので閉店」もない。
スープを沸かすために、朝早くから来る必要もなくなった。開店時間が11時だから、社員は10時30分に来れば間に合う。閉店後は30分以内に帰るように決められているので、社員の拘束時間はおよそ10時半~21時半におさまる。
ラーメン以外の料理のベースにもなるスープの製造改革が、社員の働き方改革にも寄与した。
工場の大釜で製造したスープは、素材の味をそのまま活かしやすいストレートの生スープ100%。袋詰めされ冷蔵状態で全店に配送される。
製品の鮮度を重視するため、関東の店舗は埼玉の工場から自社トラックで90分以内に配達できる場所にある。だから店舗は埼玉近辺になるのだ。
2019年の川越本社工場完成時には、新たに圧力釜を採用。スープを加熱する時間が約3分の1に短縮され、スープに濃厚さが増したうえに2倍の量が取れて、コストを削減できた。味のブレも消えて、ラーメンの注文はさらに増えている。
ちなみにラーメンの生麺も、餃子と同様に手作りと同じ加水率約50%を実現し、加水率30~43%の店が多い競合店に差をつけた。
それらは池野谷社長自身が最終チェックする。お店で提供するものと同じ餃子やラーメンのハーフサイズを毎日試食し、気になったところは即改善する。
たとえば季節ごとに野菜の水分量が変わるから、対応して調理しなければ水分や塩分の量がブレる。その兆しを自らキャッチし、現場に指示するのだ。