「3割うまい!!」のキャッチコピーで埼玉県、東京都、群馬県に展開している「ぎょうざの満洲」。堅調に営業を続けて2022年には創業50周年を迎える同店が愛され続ける理由は、いったいどんなところにあるのだろうか。
「秘密のケンミンSHOW」の元リサーチャーとして全国各地のネタを集め、現在はジャーナリストとして活躍する辰井裕紀氏の著書『強くてうまい! ローカル飲食チェーン』(PHP研究所)の一部を抜粋し、紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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売り上げの3割が「餃子テイクアウト」
「うちは売り上げの3割が、生餃子のテイクアウトなんです」
そのテイクアウトでとくに売れるのが、業務用の「冷凍 生ぎょうざ60個入」。もともとは出前を中心に営業していたが、そのときに創業者が出前をやめて「お店に来ていただける店づくりをしたい」と、じつに50年ほど前から生餃子のテイクアウトを始めた。
さらに、テイクアウト全体では売り上げの4割を占める。店頭レジ横の冷蔵庫の面積は店内の数十分の一に過ぎないが、満洲の屋台骨なのだ。
実際、店内には大袋に入った「業務用餃子」を買い求める人がよく訪れていた。
餃子の売れ行きに一役買うのが、テーブルのタッチパネルだ。
「餃子のおいしい調理法」が表示されるので、スマホのカメラで撮ればレシピになる。餃子の特売日情報も流れるから、帰るときには、ついおみやげの餃子を「買っていこうかな」となるわけだ。
待ち時間での購入も働きかけて、二重三重ものアピールで「餃子買っちゃうか」を引き出す。
「餃子を包むのがヘタ」だから、合理化できた
餃子は脂身を3割減らして、その分赤身を3割増量した豚肉のひき肉を使い、「カロリーを減らしつつ飽きない味に仕上げた」という。
そしてこの餃子、機械では掟破りの「加水率約50%」をいち早く実現した。
加水率とは小麦粉を練るときの水の比率で、水分の多い皮はくっつきやすいため、機械では作りづらい。たとえば機械ではかつて43%が限界で、市販の皮はいまも多くが35%程度だ。
そこで小麦粉の練り方、ロールのかけ方、皮と皮がくっつかないようにする粉の散布の仕方など、メーカーに何十回も注文をつけながら膨大なテストと機械の改良を行なった。その結果、加水率約50%のもちもちな皮にできた。
この餃子は、ぎょうざの満洲にとって合理化の象徴でもある。
黎明期の1960年代、当時の社長であった金子梅吉会長の「餃子を包むのがヘタだった」というシンプルな理由から、まだ珍しい、自動で餃子が包める機械をいち早く導入した。ラクに手間なくたくさん早く餃子が作れて、かつほかよりずっと安かったことから、店は大繁盛したのだ。