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A子さんと結婚する大きなきっかけは大翔くんの「パパになって」という一言

「なるべくA子の家へ行って、大翔にご飯を作ってあげました。公園に行くのが好きで、よく一緒に行きました。出会ったときから本当に優しい子だった。お菓子を食べていても、必ず半分くれるような子供でした。一方で、優しすぎてもだめになりますよね。イヤなことがあってもイヤと言えない子供だったんです。そういうことを、もっとうまく教えてあげたかったです」

 大翔くんが田中被告に懐くまでに時間はかからなかったという。「パパになって」という一言は、田中被告がA子さんと結婚する大きなきっかけとなった。

 田中被告は家を引き払い、A子さん、大翔くんと3人で暮らすようになり、ほどなくして結婚した。大翔くんとはすぐに養子縁組をしたという。付き合い始めた頃、A子さんは日雇い仕事を辞めており、田中被告が家計を支えた。

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「出会った後、だいぶ早い段階からA子は生活保護を受給していましたが、あまり詳しいことはわかりません。仕事の合間に大翔を公園によく連れていきました。その間にA子は洗濯や掃除をやってくれる。食事は、お互いが作っていました」

田中容疑者らが住んでいた県営住宅 ©文藝春秋

 

 3人の生活はうまくいっていたようだ。そして、蓮翔ちゃんが生まれた。

「同じ『翔』という漢字をつけたことは、大翔も蓮翔もどちらも自分の大切な子供で、血が繋がっているとかいないとか、そういうことは関係なく、同じように愛するという決意でもありました」

「妊娠中も昼から酒を飲むことも多かった」

 しかし徐々に家庭は崩壊していく。A子さんは、酒を飲むのがとにかく好きで、子供が生まれてからもその生活を変えることはなかったという。

「子供の面倒も見ないで昼から酒を飲んでしまうことも多かった。蓮翔がお腹の中にいる頃なんて、特にひどかった。もちろん子供ができて、ナイーブになっていたというのはよくわかりますが……。

 それに、酒を飲むと暴れてしまうんですね。酔うとどうしようもなくなってしまうことがありました。蓮翔と姫奈が生まれた後も改善せず、酔っ払って、あることないこと憶測で話すんですよ。自分が仕事をしているふりをして、女と遊んでいるだのなんだの……。仕事中も電話をしてきて、そういうことをワーワー言ってくる。そして後ろでは子供たちが泣いているんです。

 仕事どころではなくなり、先方にも迷惑をかけてしまうので、仕事は辞めました。それからは生活保護を受給していました。A子とは警察沙汰の喧嘩もしてしまい、大野城には住んでいられなくなって、福岡市に引っ越しました」