過去数十年間の日本社会を振り返ってみると、いつの時代にも存在していたヤンキーと呼ばれる人々。その特徴は、80年代にはツッパリ、90年代にはチーマー、00年代にはオラオラ系……と時代ごとに少しずつ変化している。

 それに合わせて、彼らに好まれる音楽も変化してきただろう。人が特定の音楽を好きになる際には、何らかの要素に共感しているはず。それならば、年代ごとのヤンキーに支持された音楽から、その当時の“ヤンキー性”を考察することができるのではないだろうか。

 そこで、今回は著書『世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析』(KADOKAWA)などでヤンキーの精神性について分析しており、音楽にも造詣が深い、精神科医で批評家の斎藤環氏にお話を伺った。(全2回の1回目。後編を読む)

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70年代、ヤンキーの前身となったのは暴走族

――まずヤンキーとは何か、定義を教えてください。

斎藤 全ての時代のヤンキーに共通する特徴があると断言できないので、ヤンキーを定義することは難しいです。そこを踏まえてあえて言えば、「70年代の不良文化を基本として東アジア的な家族主義を取り込んだホモソーシャル集団」ですかね。“仲間や家族との絆”や“気合いを重視する価値観”、あとは“バッドセンス”がキーワードになってくると思います。

――不良とは別物と考えるべきでしょうか。

斎藤 ある種の不良文化であることは間違いないので、切り離して考えることはできないと思います。70~80年代当初のド真ん中の不良文化が、浸透、拡散されたことによってできたカルチャーのひとつが、仲間主義や家族主義などの倫理観が含まれたヤンキーカルチャーと考えられるでしょう。