文春オンライン
10年で1000億円以上も売上増加…日テレをV字回復させた男《他、多士済々のメディア「列伝」登場》

10年で1000億円以上も売上増加…日テレをV字回復させた男《他、多士済々のメディア「列伝」登場》

2021/09/22
note

 エコノミストに1998年に入社をし、現在はボードメンバーとしてデジタル戦略を担当しているトム・スタンデージもこの列伝の目次に加わった。

 話を聞くと、意外な事実がわかった。それは、新聞が「紙」から「ネット」への「溝(キャズム)」を越えるのに苦労しているのに対して、エコノミストは「もともとその溝(キャズム)を越えていた」のだと言う。

 スタンデージによれば、そもそも、ウェブ版をつくった1997年の当時から、エコノミスト誌は、タダで、記事を見せていなかったのだ。紙の定期購読者のみが、インターネット版にアクセスできるようにしていた。

ADVERTISEMENT

「多くの新聞や雑誌は、2010年代になるまで、タダで見せても広告を出せば、利益はやがて出ると考えていました。しかしそれは間違いだったわけです」

エコノミスト誌のトム・スタンデージ

  現在、エコノミスト誌の購読は紙とデジタルのバンドルの形か、デジタル版のみのふたつしかない。つまり100パーセントのDXを有料購読モデルで達成している。

クラブ取材の限界を越えた記者たち

 そうした中では、発表者や、当局者に入って情報を先取りして書く「前うち」の記事では、有料購読者は増えようにもない。

 そうした記事は、どこのメディアで読んでも同じだし、だからネットの無料ニュースで流れている。

 列伝の中では、発表ものや「前うち」に傾きがちな現在の新聞社の中で、自分たちの独自の見立てをもって、当局の発表の嘘を暴いた秋田魁新報の記者たちや、匿名のホームレスとして処理された女性が、なぜ渋谷のバス停で死ななければならなかったのか、そこにたどり着くまでの可憐な人生を実名で追ったNHKの警視庁記者クラブの記者たちにもスポットをあてている。

今回は朝日新聞にも触れる

 実は通史である『2050年のメディア』を発表した後日本記者クラブで会見をした際「なぜ、朝日新聞については触れないのか」という質問が朝日の大鹿靖明記者からあった。

「この20年の変化を書くのに、読売と日経そしてヤフーで十分だったから」と答えたが、こんどの本は、その朝日新聞についても最終章で書いた。

 残念ながら、この最終章は列伝ではない。朝日新聞がなぜうまくいっていないか、これからどうすべきなのかを書いている。

 この列伝のテーマ、「変化の中のジャーナリストの姿」から導き出される結論であるとも思う。

 同社の経営者と若手記者にむけて書いた原稿だが、この仕事に携わる人すべてに参考になる原稿だろう。

2050年のジャーナリスト

下山 進

毎日新聞出版

2021年9月22日 発売

10年で1000億円以上も売上増加…日テレをV字回復させた男《他、多士済々のメディア「列伝」登場》

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー