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「まだ19歳だし、相手がミュージシャンだなんてあり得ない」吉田拓郎からのプロポーズに両親は大反対…浅田美代子の背中を押した樹木希林の言葉

『ひとりじめ』より#2

2021/10/02

source : 文藝出版局

genre : エンタメ, 芸能, テレビ・ラジオ

 この結婚は父が最も反対していたからこそ、絶対に叶えてやろうという気持ちになったことは否定できない。

 それから、結婚を決心できた理由のもう1つは、希林さんだ。「結婚したら芸能界を引退して欲しい」という吉田さんの要望にも悩んでいた私に、希林さんは、「結婚することも、専業主婦になることも良いことよ」と背中を押してくれた。

あまりにもストレートな物言いに驚き

「専業主婦をちゃんとやれたら、人間として何でもできるようになるわよ。家を切り盛りするんだよ。しかも、報酬もないのに、家族のために尽くせるなんてすごい仕事だよ。美代ちゃん、やってごらんよ」

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樹木希林さん ©文藝春秋

 その言葉が私を前向きな気持ちにしてくれた。しかも、希林さんは、この結婚に反対する両親を説得しに、我が家に来てくれた。いつものように、希林さんは突然家にやってくると、母と向き合ってこう言った。

「お母さん、心配なのはわかります。でも、結婚は本人の自由ですよね。それに、美代ちゃんはもうやられちゃったんですから」

 あまりにもストレートな物言いに、一緒にいた私も心臓が止まりそうになったし、母親も驚きのあまり、ぽかんとした後にさめざめと泣いていた。

 あの瞬間は、思い返しても修羅場としか言いようがない。しかし、希林さんのおかげかはわからないけれど、結局、両親にも許されることとなった。かくして、私は21歳で結婚した。そして、7年間の結婚生活を経て、離婚した。

結婚は分別がつかないうちにしたほうがいい

 結婚している間は希林さんとは疎遠になった。

 たぶん、芸能界の風のようなものを私に匂わせたくなかったのだろう。結婚する時も私の背中を押して、たくさんの力をくれたけれど、希林さんは直感がずば抜けて鋭いところがあるから、いつか私の結婚が綻んでしまう可能性があることも、当時から予感していたのかもしれない。それでも、私が選んだ道を応援してくれる人なのだ。

 娘の也哉子ちゃんが19歳の時に、本木雅弘さんと結婚した時も、希林さんは全く反対しなかったと聞いた。

「結婚は分別がつかないうちにしたほうがいいよ。今は一度も結婚しない人が増えているでしょう。あれは、年齢と経験を重ねて分別がつき過ぎちゃったからだろうね」

 ある時、そんな風に言っていたことがある。たとえ綻んでしまったとしても、「一度は結婚してみたらいい。人として当たり前の経験ができるし、普通の感覚が身につくから。それは役者としての財産になるよね」とも。

 希林さんの言葉は、私自身も年齢と経験を重ねるほどに実感している。結婚生活は悲しかったことも苦しかったことも嬉しかったことも全て含めて、私の人生にとって無くてはならないものだったから。

ひとりじめ (文春e-book)

浅田 美代子

文藝春秋

2021年9月15日 発売

「まだ19歳だし、相手がミュージシャンだなんてあり得ない」吉田拓郎からのプロポーズに両親は大反対…浅田美代子の背中を押した樹木希林の言葉

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