前出の大手紙記者によると、「3人のうち、少なくともター・マイン・クオン容疑者は元技能実習生と見られ、コロナで帰国できなくなり、困窮していたもよう。残る2人の女は、当初は会社員と報じられましたが、実際は失業状態だったとの情報もある」とのこと。そこに降ってきた儲け話に、軽い気持ちで加担してしまった可能性もある。
SNSで『日本の古い紙幣で買い物してくれる人募集』という投稿が…?
筆者は容疑者の背後関係に迫るため、ベトナム人翻訳者の協力のもと、フェイスブックにある在日ベトナム人のコミュニティで情報提供を呼び掛けた。すると、ひとりの在日ベトナム人からこんな話が寄せられた。
「5月ごろ、SNS上で『今は使えなくなった日本の古い紙幣で買い物をしてくれる人募集』という投稿を目にしました。過去の投稿を見ると偽造の在留カードや学生証、他人名義の銀行口座を売っている怪しいアカウントだったので、返信しませんでしたが、ニセ札の事件をニュースで知って『もしかして!?』と思いました」
筆者はこのアカウントへの接触を試みたが、すでに消去されていたのか、特定することはできなかった。
一方で、あるフェイスブックの在日ベトナム人コミュニティには、防犯カメラがとらえた犯人や、使用されたニセ札の画像がいくつもアップされていた。その多くは、ニセ札が使用されたコンビニなどでアルバイト店員として働くベトナム人が、店の防犯カメラの映像などをスマホで撮影したオリジナル画像で、国内で公表されていないものも含まれていた。
そうした画像を投稿した、都内コンビニ店のアルバイト店員のベトナム人女性は、筆者の取材にこう明かした。
「8月下旬、私の店でニセ札を使った、防犯カメラに映っていた男は今回逮捕された容疑者の中に含まれていなかった。犯人は3人以外にもいるはずです」
事件の全容解明には、警察による捜査の進展を待つしかなさそうだ。