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2021/09/22

 テレビ朝日の報道によると、7月下旬には、やはりPSではじまりNで終わる、ニセ札とみられる旧一万円札の札束を映した動画が、ベトナム人と思われる投稿者によってSNSにアップされ、銀行での交換の可否を問う質問も書き込まれていたという。この投稿者が今回逮捕された容疑者のいずれかだったかどうかは不明だが、そうだとしたら不用心というしかない。

「犯人らは、これほどの大事件になるとは思っていなかったのでは」と話すのは、在日歴9年のベトナム人男性だ。

「ベトナムはニセ札が非常に多く、いつの間にか財布の中にニセ札が紛れ込んでいることも珍しくありません。かといって、いちいち警察に届けたりしない。そんなことしたら没収されて損するだけですから。どうするかというと、ニセ札だとバレないように、使ってしまうのです。一種のババ抜きみたいなものです(笑)。仮にニセ札であることが相手にバレたとしても、受け取りを拒否されるだけで、通報されたりしない。3人の容疑者も、その程度の感覚だったのだと思います」(ベトナム人男性)

使用されたニセ札は本物そっくりの通称「PSシリーズ」

 一方で気になるのがニセ札の出処だ。実は、PSではじまる記番号が印字された旧一万円札は「PSシリーズ」と呼ばれ、これまでもたびたび事件となっているのだ。

 紙幣鑑別機を製造している「松村エンジニアリング」代表で、北朝鮮で製造されたとされる偽100米ドル札「スーパーK」の発見者でもある松村喜秀氏が振り返る。

話を聞いた「ニセ札ハンター」こと松村喜秀氏

「今回使われたニセ札はその記番号からPSシリーズと呼ばれ、これまで何度も日本国内で発見されている。私がPSシリーズを最初に鑑定したのは、2007年9月のことだったと思います。非常に精巧な作りで手触りも本物そっくりだったが、聖徳太子の肖像画の一部にわずかにシミがあった。その直後には、都内の銀行窓口で3000万円分のPSシリーズを自分の口座に入金した人物が逮捕された事件もありました。2011年には、私が当局からの依頼で鑑定した旧一万円札がPSシリーズでした。2007年に鑑定したものとくらべ、品質はやや低くなっていた一方で、肖像画のシミは消えていました。おそらく同じ版下を使って増刷されたものだと思います。ちなみに持ち主は、PSシリーズをニセ札と知らないまま1千万円単位で所持していたそうです」