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 福岡地裁は、工藤会という組織について、「野村は最上位の立場で重要事項についての意思決定に関与していたと推認できる。野村や田上の意向を無視して実行することは組織のありようから考えられない」と指摘。

 元漁協組合長射殺事件では、「野村が港湾事業についての利権に重大な関心を抱き、(組合長側が)交際を拒絶する中で起きた。動機は十分にあり関与がなかったとは考えられず、(実行犯との)共謀が認められる」と認定した。元福岡県警警部銃撃事件などでも同様に共謀を認定した。

元福岡県警部銃撃事件で指定暴力団工藤会本部事務所へ家宅捜索に入る福岡県警捜査員 ©️時事通信社

小倉の街の平穏は…?

 野村に死刑判決、田上に無期懲役判決が8月に下ったことで、当面の間は勾留が続くとみられる。だが、長年にわたって小倉の街に君臨するかのように暴力で支配してきた野村が戻ってこないとする保証はない。

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 こうした状況について、警察庁幹部が解説する。

「一審の福岡地裁では野村に死刑判決が出たが、小倉を中心とした北九州市の市民は安心したとまでは言えないだろう。野村は控訴したために、この後の福岡高裁でも一審の判断が維持されて、二審でも死刑となった段階でようやく『もう出てくることはない』と実感して安心を取り戻すのではないか」

2019年11月、取り壊しが始まった工藤会の本部事務所 ©️共同通信社

 さらに、「野村が帰って来ないということになれば、北九州市民だけでなく、野村の支配を恐れていた工藤会の末端の組員たちにも安堵が広がるかもしれない。そうなれば、工藤会から抜けてヤクザを辞めたいと考えていた組員たちの脱退も相次ぐことになる可能性もある」との考えを示した。

 暴力団対策法が相次いで改正されて規制が強化されたうえ、暴力団排除条例も全国で整備され、暴力団組織は全国的に縮小傾向にある。工藤会の組織が弱体化したことで、他組織の暴力団がシノギ(資金源)を求めて小倉を中心とする北九州市に進出したとなれば、これを阻もうとする工藤会との間で対立抗争が起きないとも限らない。

小倉駅 ©️iStock.com

 再び暴力の街、修羅の街となることを防ぐべく、さらなる対策が求められる警察にとっても正念場を迎えることとなる。(敬称略)(#2へ続く)