一般市民を襲撃した4つの事件で殺人などの罪に問われた暴力団「工藤会」(北九州市)の総裁、野村悟が2021年8月に福岡地裁で死刑判決を言い渡された。工藤会ナンバー2の会長、田上不美夫は無期懲役の判決だった。野村らは直接、手を下していなかったが、判決は元漁協組合長射殺事件などで実行犯との共謀が「推認」されるとの判断だった。
判決公判で主文が言い渡された後、野村は裁判長に向かって、「あんた生涯、このこと後悔するよ」と威嚇とも受け取られかねない発言をした。田上も「ひどいな、あんた」と述べた。工藤会による市民襲撃事件が相次いだ北九州市はかつて、「暴力の街」「修羅の街」とも呼ばれるようになってしまっただけに、野村の弁護士は脅しの意味ではないと発言の趣旨の説明に追われた。だが、この発言をめぐって様々な憶測が飛び交った。(全3回の2回目/#1、#3を読む)
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恫喝か、裁判長への批判か…?
刑事裁判の判決公判では通常、冒頭で懲役刑などの主文が言い渡され、その後、量刑の理由などが述べられる。しかし、野村の場合は、主文は後回しにされ、裁判長は認定された犯罪事実や量刑の理由から述べ始めた。
極刑である死刑の言い渡しを後回しにするのは、冒頭で死刑を宣告してしまうと、被告が動揺して量刑理由などをしっかりと聞き取ることができないのではないかという裁判官たちの配慮からとされている。
野村に対する福岡地裁の判決公判は午前10時に始まり、昼の休憩をはさんで夕方にまで及んだ。判決書を読み上げ続けた裁判官は午後4時すぎ、最後になって死刑を宣告した。
閉廷直前、判決の言い渡し終了と同時に野村は思わぬ発言をした。「なんだこの裁判は。全然公正やない。全部、推認、推認。あんた生涯、このこと後悔するよ」と、恫喝とも受け取られかねない言葉だった。法廷でのこうした発言は、ニュースで世間に伝わることを考えたうえでの子分たちへのメッセージではないかとも一部では受け止められた。
この発言が大きく報道されると、弁護士は、「公正な判断ではなく、裁判官として職務上、生涯後悔するという趣旨だった」と野村が面会の際に述べていたと説明した。脅しや報復の意図を否定した野村の見解を明らかにした。