コロナ禍での開催となりながらも、今夏大きな盛り上がりを見せた東京オリンピック。多くの競技が注目を集めたが、スケートボードほど五輪の後に、世間からの関心度が高まった競技はないのではないだろうか。
五輪閉幕後もメダリストとなったスケートボーダーの姿をあらゆるメディアで見るようになったし、全国各地でスケートパーク建設へ向けた動きが加速していると聞く。
根強いスケートボードに対する社会からの偏見
女子ストリートで金メダルを獲得した西矢椛選手(にしやもみじ・14)が拠点としている、大阪府松原市の「スポーツパークまつばら」も施設拡充が決まり、東北を代表する施設として評価の高い「寒河江スケートパーク」も補修と改築をスタートさせるなど、全国各地でさらなる環境整備へ向けた動きが加速している。
しかし、その一方でスケートボードに対する社会からの偏見が、未だ根強いというのも事実だ。
京急電鉄が進めた東京都大田区の糀谷駅付近の高架下のスケートパーク&ショップ事業は、その最たる例と言えるだろう。パーク自体は完成しているにもかかわらず、地域住人からの苦情により計画が頓挫、最終的には中止に追い込まれ、滑走不可能になってしまったのである。
では、なぜ莫大な予算をかけてスケートパークを造ったのにも関わらず、利用中止に追い込まれてしまったのだろうか?
そこには地域住民との埋めようにも埋めることのできない大きな溝があった。
近隣住民からの騒音に対する苦情
そもそもこの施設は羽田空港の国際化に伴い、大田区の湾岸エリア一帯の駅を全て高架にする街づくりを進めた京急電鉄の高架下活用事業の一環としてスタート。そこに近年のスポーツとしての認知度向上や競技人口の増加を背景に、スケートボードに白羽の矢が立ち、このプロジェクトは動き出したのだ。
大田区にて長年スケートボードショップ「5050」を営んでいる冨田誠さんをスケートボードパークプロジェクトの運営者に据え、昨年の6月にはパークが完成した。あとはオープンを待つだけのはずだった。
しかし、そこに待ったをかけたのが、音量検査とプロモビデオの撮影で2日間、日中に4時間滑った際に寄せられた、近隣住民からの騒音に対する苦情であった。
この施設は、パークの建設前に地域17町会に説明会を済ませており、人々が行き交う駅近の高架下にスケートパークができるため、防音壁を使用し、誰でも自由に見学できるように一部をアクリル壁にするといった配慮も見せていた。