20代後半は一気にDJ活動へ
――それまで第一線で活躍してきた「歌手」としての活動を止めるのは怖くなかったですか。
鈴木 テレビみたいな大勢の目に触れる場所からは遠ざかっていくだろうな、という直感はありましたが、それと同時に「何か新しいことに挑戦したいな」とも思っていました。
その少し前に、中田ヤスタカさんがDJをやっているところに私がシークレットゲストで出て、中田さんの作ってくれた楽曲を披露する機会があったんです。そこで中田さんのDJ姿を見て、「あ、かっこいい。これやりたい!」とビビッときて。自分の曲をDJプレイでかけて披露するという、ライブとは違う形がひらめきました。
DJなら自分の曲もかけられるし、好きなクラブミュージックもかけられると思って、それで20代後半は一気にDJ活動に走った感じですね。やってみたら、自分の好きな音楽をずっと触っていられるということが思った以上に楽しくて、DJでしばらく頑張ってみようと思ったんです。
「なんでここに来たの? あんた世界が違うでしょ」
――メジャーからアンダーグラウンドへの転身で難しかったことはありますか。
鈴木 DJ界はDJ界で奥が深いので、最初はいきなり私みたいな新参者の、しかも芸能人が入ってきたことに対しては冷たかったですね。誰も踊ってくれないし、歓声もなし、みたいな。
――お客さんはDJが鈴木亜美だとわかっていて冷たい態度をとるんですか?
鈴木 もちろん分かっていて、「なんでここに来たの? あんた世界が違うでしょ」みたいな。怖かったですよ。でも、「絶対にこの人たちを踊らせてやる!」と思って2年、3年、4年と頑張って、ハウスネイション(※エイベックス主催の一大ハウスイベント)にも携わっていけるようになって。今度は私主催で女性のDJを集めたイベントをアジアで展開するまでになりました。その時に、こういう裏方的な音楽との関わり方が自分には案外合ってるな、と思いましたね。
――歌手「鈴木亜美」ではなく、制作サイドとして、裏方で働いていこうと思ったのでしょうか。
鈴木 実際にガールズDJで世界を盛り上げていこう、というのが形になってきていたので、このまま延長で制作を極めていこうかな、とも思っていました。
――しかし今また再び、鈴木さんがテレビやYouTubeで引っ張りだこになっていますよね。
鈴木 これは本当に自分でも予想外で、まったく想像していませんでした。特にテレビでがんばろうという気もなかったし、とにかく当時はDJイベントを成功させたい一心だったんです。
でもそんな時にたまたま今の夫に出会って結婚となり、それをメディアに発表したら予想以上に反響がありました。結婚・妊娠・出産をきっかけにまたテレビ出演が増えていって、料理や激辛などで取り上げてもらえるようになったんです。