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連載この鉄道がすごい

2021/09/26

 廃止される引き上げ線は、内回り、外回りの電車に影響を与えないように、両線の間にある。大崎の車両基地からやってきた電車を折り返して外回り電車の田町駅始発とし、混雑時間帯に増発する役割を担った。この引き上げ線がなくなることで山手線のダイヤも影響を受ける。田町駅始発列車を前夜に配置しておくか、池袋発に繰り上げられるか、という選択になる。いっそ田町駅始発をやめるという選択もあるけれど、田町駅始発は高輪ゲートウェイ駅、品川駅の外回り始発という意味が大きいので、何らかの工夫で残るだろう。

省エネ運転の取り組み

 山手線では省エネルギーの新たな取り組みも始まった。山手線で運行しているE235系の機器モニタリング結果を分析し、惰性で運転する時間を長くして電力使用量を減らす。いままで、鉄道車両の省エネルギーと言えば、電力消費の少ない機器を採用するとか、回生ブレーキと言って、減速時のモーターで発電して架線に戻すという仕組みが主だった。その次の段階は省エネ運転だ。クルマで言うところの「エコドライブ」である。

 クルマの場合は交通状況によって、アクセルとブレーキを何度も操作する。エコドライブとは、たとえば高速道路で燃費の良い速度を維持するとか、一般道で前方に赤信号をみつけたら加速を止める等の工夫だ。急加速、急停車をやめましょう、という運転である。

 列車の運転は基本的に、発車、加速、惰行、減速、停止のシンプルな操作である。遅れを取り戻す、長距離運行や勾配で惰行時の速度が下がる時以外では「追い加速」はしない。

 JR東日本の取り組みは、加速性能を高めて必要な初速に短時間で達し、惰行運転の距離を伸ばし、最小の減速で停車する。惰行時間が長いほど電力消費は小さくなる。ただし、急加速、急減速にするわけではない。運転士たちのそれぞれの運転方法の中で、もっとも効率の良い加速操作、長い惰行距離、効率の良い減速操作を割り出す。その組み合わせからベストな省エネ運転操作を見つけ出し、すべての運転士に共有しようという考え方のようだ。山手線1周当たりで、通常運転と省エネ運転で、約10%の運転エネルギーを削減できたという。

 今後は運転士がモニタリングデータを取得し、運転状況を把握できる仕組みとする。省エネ運転を会得するための環境を整えていくという。もちろんそれは自動運転にも反映させることになるだろう。

 車両、駅、省エネ、そして自動運転、山手線の進化は止まらない。自動運転は進化のゴールか、その先に何があるのか。興味は尽きない。確かなことは、山手線の新たな取り組みが、他の路線、JR東日本全体、日本全体の鉄道の進化になっていくことだ。

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