真辺さんは有名店のそばつゆを家庭で食べることができるようなものを作りたくなった。つまり、目指した「蕎麦つゆ」のコンセプトは次のようなものであった。
・有名蕎麦屋以上のレシピで、さらに多くの備長炭直火焼本節や宗田節を使って作る。
・化学調味料や酵母エキスなどは一切使わない。
・家庭用なので、そうめんやうどん、乾麺にも合う味。豆腐などにかけてもうまい味。
・最高のみりんや返しを使う。
・値段を考えないで本物の味でいいもので作る。
――味や配合はどのように決めていったのでしょうか?
真辺 老舗有名そば店は懇意なところが多く、私はそばつゆの作り方はほぼ熟知していたので、配合はお教えできませんが、こんな配合ならうまいだろうというものは頭の中に常にありましたので、ほぼ一発でそのレシピや配合を決めることができました。すでに引退された有名蕎麦屋「練馬 田中屋」の田中國安氏にこの「蕎麦つゆ」を送ったところ、「味は完璧、配合はこれでいい、何もいじるな」とお墨付きをもらうことができ、商品化に踏み切ることができました。
みりんは岐阜の白扇みりん、返しは広島の寺岡有機醸造の有機丸大豆醤油を使用した。めんつゆも大衆化と高級化の二極化が加速している中、安心な食材を望む声が高まっている。スーパーでも本物志向の商品が人気となっている。コロナ禍で巣ごもり消費が拡大している状況下で、丸勝かつおぶしは有名店以上の配合で今までにない高級な「蕎麦つゆ」を誕生させたわけである。
高級スーパーの仕入れの達人が即決
――「蕎麦つゆ」をスーパーなどに売り込んだ時の反応はどうでしたか?
真辺:江古田の高級スーパー「江古田エスカマーレ」の常務で、全国スーパーマーケット協会理事をされている阿出川光俊さんのところに最初に持って行って味見してもらいました。すると、納入即決。しかも「定価1500円でいきましょう」と値段まで決まってしまった(笑)。
そのあたりのことを聞きに取材場所を変えて「江古田エスカマーレ」に同行してみた。「蕎麦つゆ」は他のめんつゆとは別の場所に置かれて販売されていた。阿出川光俊さんに聞くと、確実に常連さんが付いていて、定期的に売れているとのこと。
――「蕎麦つゆ」の第一印象はいかがでしたか?
阿出川 ひと口味見して「これは上等で本物、うまい」と即購入決定でした。値段も1500円に設定しました。1本でそばつゆとしてなら3杯分はとれるでしょう。今、コロナ禍でおいしい有名蕎麦屋にも行けないし、自宅で少しは贅沢をしようという気分もありますよね。2人で外食すればすぐ4000~5000円になります。この「蕎麦つゆ」と美味しい生麺の蕎麦を一緒に買っても、半分位ですから、決して高いということはないと思います。
ウチでもいいめんつゆは置いているのですが、この「蕎麦つゆ」は、とにかく規格外の商品だった。風味がいい、有名蕎麦屋の上質な味が再現されているし、しかも、化学調味料は一切なしです。真辺さんにはスーパーの商品開発の時もしばしば相談させてもらっています。普通の営業マンではない、本物のうまいものは何でも知っている鰹節問屋の専門家ですね。
この日本一高い「蕎麦つゆ」は直販しておらず、高級スーパーや百貨店などで購入できる。江古田エスカマーレをはじめ、DEAN&DELUCA オンラインストア、クイーンズ伊勢丹、銀座三越、広尾明治屋、逗子スズキヤ、京都フレンドフーズ、京都久在屋、浜松の前嶋屋、神戸のフレッシュフード・モーリなどである。