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作品はほぼ手書き文字

――高田さんは、ウェブで連載した原稿を加筆修正して書籍化するのではなく、頭から全ページ描き直しているんですよね?

高田 今回の本もそうですし、今までに出した本4冊とも全てウェブ連載の原稿とは別にイチから描いています。他の作家さんがどうしているか全く分からないので、自分的には普通のことだと思っていました。

 私の作品は、ほぼ手書き文字なのですが、今回の『カルト村の子守唄』では、全ページ分の文字の下書きが終わった段階で、前作までの原稿を確認したら、文字の大きさがそれまでより大きかったんです。それでペン入れの段階で、文字のサイズを小さめに変えることに……。せっかく丁寧に書いた下書きをなぞることができなくて、苦労しました。

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両親から聞いた話をまとめる作業は、本当に大変

――高田さんは昔のことをよく覚えていて、その記憶をもとにこれまでコミックエッセイを描かれてきましたが、今回は、ご自身の記憶があまり残っていない赤ちゃんから幼少期の出来事なので、ご両親にも取材して描かれたそうですね。特別編として、大学生だったご両親が村に入って結婚に至るまでのエピソードを描いた「私の両親編」も収録されていますが、「取材して描く」ということに挑戦してみて、いかがでしたか?

高田 まず「両親が村に入った当時の話をしてくれるだろうか?」というのが不安だったのですが、杞憂でした。メモを取りながらいろんな話を聞くことができました。父は客観的な視点も取り入れつつ、順序立てて話してくれるのですが、母は自分の感じたことをそのまま話すので、同じことを聞いても返ってくる答えが違うのが面白かったです。

 

 でも、聞いた話を漫画にまとめる作業は、本当に大変でした。時系列に整理して、父と母の若い頃の時代の雰囲気や景色を全く知らないまま絵にしないといけないし、父と母が話すそのままの言い回しだと、村特有の暮らしや考え方を知らない一般の方には理解できないことも多いため、誰でも分かるように変換したり……と、編集と翻訳と制作を同時進行でしている気分でした。流れを考えるのに何日もかかりましたし、自分の思い出を描く方がよっぽど楽でしたね(笑)。

 あと、自分の記憶をもとに描く時もそうですが、人の実話なので、嘘がないように、できるだけ脚色しないように……と気をつけて描きました。

――今回初めて、ご両親の結婚秘話を知ったそうですね。

高田 はい、結婚したときのことを聞いたら、父が「ある意味、非合法だったんだよね……」と話し始めたので思わず「えっ! まさかお金でも積んだの!?」と聞き返しちゃいました(笑)。積んでないそうです。