奨励会の第69回三段リーグが終了。今回の三段リーグは2つの四段昇段枠を総勢37名の三段が争った。厳しい戦いを制して夢を勝ち取ったのは横山友紀新四段、狩山幹生新四段の2人。新四段の2名についてリポートする。

三段リーグ最終局が行われた将棋会館 ©️文藝春秋

横山、狩山、柵木の三つ巴の争い

 第69回三段リーグの最終18、19回戦が行われたのは9月11日。この日の時点で昇段の可能性があったのは以下の6名である。

(2)横山友紀 12勝4敗

(5)狩山幹生 12勝4敗

(6)柵木幹太 12勝4敗

(27)吉田桂悟 12勝5敗

(22)山川泰煕 11勝5敗

(1)三田敏弘 10勝6敗

(カッコ内の数字はリーグ順位)

 吉田以下の3名が昇段するには、自身の勝利に加えて、上位3名のうち2名が連敗する必要があったため、事実上は横山、狩山、柵木の三つ巴の争いだ。そして横山は、18回戦で自身が勝ち、かつ狩山と柵木のいずれかが敗れれば、残り1戦を残して昇段が決まるという有利な状況にあった。ただ横山は前回のリーグで、最終日に連勝していれば昇段だったという苦い思い出もある。何が起こるかわからないのが、三段リーグという戦場だ。

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 午前中に行われた18回戦の結果は横山○、狩山●、柵木○というもの。この時点で横山の昇段が確定し、そして残る1枠の自力昇段の権利は、狩山から柵木に移った。

(2)横山友紀 13勝4敗(昇段決定)

(6)柵木幹太 13勝4敗

(5)狩山幹生 12勝5敗

 また、18回戦で敗れた岡井良樹三段は8勝9敗となり、勝ち越しの可能性が消滅したため、年齢制限による退会が決まった。

横山体調不良のアクシデント…対戦相手は退会が決まった岡井

 最終19回戦が始まる直前にアクシデントが発生した。先ほど四段昇段を決めた横山が体調不良を訴えたため、この日の対局は行わないことになる。関西所属の横山は一足先に帰阪した。筆者は三段リーグ最終日の取材を20年ほど継続しているが、このようなケースに遭遇したのは初めてだ。そもそもコロナ前ならば不戦敗、あるいは体調不良にもかまわず指す、のいずれかだっただろう。

 そして19回戦では柵木が敗れ、狩山が勝って再逆転。この結果、狩山の昇段が決まったが、同時に1局を残した横山の1位通過も確定した。このことが横山の最終局はどうなるかという疑問を生むことにもなった。

四段昇段を決め、調査書を書く狩山新四段

 1位通過が確定している横山にとって、最終局はいわば消化試合である。ただ対戦相手にとって、ここで勝つか負けるかは来期の順位につながるために大きな勝負だ。よって普通ならば横山の不戦敗、あるいは延期しての再対局となることのいずれかが考えられたが、今回の横山の対戦相手は退会が決まった岡井だった。

「後日に再対局というのは酷ではないか」

「最後の対局なんだから指させてあげたい」

 現場ではどちらの雰囲気もあった。