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横山新四段「これからは作戦勝ちから押し切る将棋を」

 改めて、横山新四段へ行われたインタビューを紹介する。

――四段昇段の気持ちをお聞かせください。

「取り残されていたようだったので、うれしいです。高校時代は勉強法が確立できず不安がありましたが、今は自信を持って指せています。ここ1年ほどは将棋を好きになってやれていたのが大きいと思います」

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王将を掲げる横山新四段

――勉強法の確立とは。

「高校時代は棋譜並べ、詰将棋、練習将棋が主体でしたが、大学に入ってからは序盤の指し手を決めて作戦を練るようになりました。その結果として前より伸びている実感があります」

――師匠の井上慶太九段にはいつ報告されましたか。

「当日、報告しました。『おめでとう。しんどかったのによく勝てたな』という返事をいただきました」

――趣味などはありますか。

「大学の友人に教わって増えました。読書、第五人格というゲーム、チェスなどです。チェスは将棋でいうとアマ五段くらいでしょうか。将棋と駒の動きは似ていますが、引き分けがあるので先手が勝つのは難しいと思います」

――プロ棋士としての目標をお願いします。

「奨励会では粘る将棋が多かったのですが、これからは作戦勝ちから押し切る将棋を目指したいですね」

井上九段の語る、新四段の2人

 この1週間、当然ながら体調面での不安はあった。結果は陰性だったが、もしコロナだったら最終戦は不戦敗になっていたという。これは四段昇段の日付となる10月1日までに対局を終えなければいけないからだ。横山のみならず、両新四段をもっとも心配していたのは2人の師匠である井上九段だっただろう。一門としては最良の結果を迎えた井上九段に話を聞いた。

「最終日は1局目の時点で横山君が上がりましたけど、狩山君が負けて、これはしんどくなったなと。ところが5時過ぎくらいに狩山君から昇段の報告を受けて驚きましたね。三段リーグにしては時間が早かったので。狩山君は自分の勝ちだけではなく、競争相手の負けも必要でしたから。報告を受けてから、複雑にならなくてよかったなあと安堵しました」

横山新四段、狩山新四段の師匠、井上慶太九段。第69回奨励会三段リーグには、昇段した2人のほかに6名の弟子が在籍していた ©️文藝春秋

 2人との出会いについて、師匠はこう振り返っていた。

「横山君は小学校低学年の頃から、加古川の道場に通ってくれました。当時は4級と認定しましたが、同世代の子どもと比較するとちょっと強いくらいです。彼は将棋以外に、ソフトボールもやっていたので、夜に2局ほど指すという感じでしたね。狩山君はもともと、地元の岡山の教室に通っていましたが、その教室の先生と私が懇意にしていたのがきっかけです。入門時はすでに有段者でしたが、菅井君以来の筋の良さを感じましたね。2人とも芯は強いタイプですし、プロになったらある程度は自分の意志で進んでほしいですね」

 横山新四段の棋風は、待っているのが好きではなく多少無理攻めでも仕掛けるタイプの振り飛車党で、自ら構想を立てて戦っている藤井猛九段を尊敬し、目標としているという。なお、井上師匠は取材の最後で「横山が藤井システムの研究をしているのはケシカランですね」と、笑っていた(井上九段は「藤井システムの被害者第1号」である)。

 両新四段の門出を祝し、今後の活躍に期待したい。

写真=相崎修司

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