狩山新四段「プロになったから振り飛車も勉強したい」
残る1局がどうなるかはさておき、狩山新四段への共同取材が始まった。その模様を紹介する。
――今のお気持ちは?
「うれしい気持ちとホッとした気持ちが半々です。今日の1局目を負けて上がれないかとも思いましたが、2局目はうまく切り替えられました。1局目が完敗だったのが、かえって良かったのかもしれません」
――目標とする棋士は?
「子供のころから目標としている菅井先生(竜也八段)です。菅井先生のように努力を続ける棋士になりたいですね」
――狩山さんは倉敷市出身ですが、大山康晴十五世名人以来となる倉敷出身の棋士が誕生し、地元からの期待も集まっています。
「初めて知った棋士が大山先生で、憧れました。大山先生の力強い受けは勉強になります」
――師匠の井上慶太九段から、何かアドバイスはありましたか。
「『自信を持って指しなさい』というメールが数日前に送られてきました。そういう気持ちを持って上がれたのは良かったです」
――趣味や息抜きなどはありますか。
「走るのが好きなので、平均して1日1時間ほどランニングしています。菅井先生がランニングに取り組んでいたから、始めたという部分もあります」
――これからの目標をお願いします。
「昨日までは四段昇段が目標でしたが、これからはまず自分の力をつけて、目の前の対局を頑張れるようにしたいですね」
同門かつ同郷の菅井八段へのあこがれを口にした狩山だが、棋風は受け主体の居飛車だという。「プロになったから、振り飛車も勉強したいですね」
また近い世代の藤井聡太三冠(狩山が1学年上)については「僕が奨励会の級位者だった中学生のころ、ネットで指しました。雲の上の存在ですが、僕も頑張らねばと刺激を受けました」と語った。
現在の関東奨励会幹事は小倉久史七段、佐藤和俊七段、黒沢怜生六段。第69回リーグの始まりと同時に幹事に就任した黒沢六段に話を聞いた。
「まだまだ新米幹事ですので、色々覚えることがありますね。私が奨励会を抜けてから7年になりますが、当時と比べると礼儀正しい子が増えた印象です。これも藤井ブームの影響でしょうか。三段リーグの独特の雰囲気は、こちらにもいい刺激になります」
岡井は「あと1つ勝っていれば……」
数日後、横山の対局が改めて9月19日に行われることが発表された。午前9時開始の対局だったが、持ち時間90分の三段リーグとしては早い終局で、10時半過ぎには終わっていた。
リーグ最終結果は以下の通り。
(2)横山友紀 13勝5敗(四段昇段)
(5)狩山幹生 13勝5敗(四段昇段)
(6)柵木幹太 13勝5敗(次点獲得)
(14)宮嶋健太 12勝6敗
(15)岡部怜央 12勝6敗
(18)貫島永州 12勝6敗
(22)山川泰煕 12勝6敗
(27)吉田桂悟 12勝6敗
12勝以上を挙げたのは以上の8名。最終日の時点で四段昇段の可能性があった6名は皆、1敗を喫している。そして最終戦を制したのは岡井だった。「作戦負けからひどいことになりました」とは横山の弁。最後の勝ち印を押した岡井は「あと1つ勝っていれば、でしたか……」とつぶやいたという。
幹事に確認したところ、横山の対局延期は規定に則ったもので、今回が特例ということではないそうだ。体調不良については、当日の朝は平熱だったが、1局目を終えた時点で発熱が確認されたという。