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第69回三段リーグは、井上慶太九段門下からダブル昇段 最終日に“予期せぬアクシデント”も

第69回三段リーグは、井上慶太九段門下からダブル昇段 最終日に“予期せぬアクシデント”も

横山友紀新四段、狩山幹生新四段に聞く

2021/09/28
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狩山新四段「プロになったから振り飛車も勉強したい」

 残る1局がどうなるかはさておき、狩山新四段への共同取材が始まった。その模様を紹介する。

――今のお気持ちは?

「うれしい気持ちとホッとした気持ちが半々です。今日の1局目を負けて上がれないかとも思いましたが、2局目はうまく切り替えられました。1局目が完敗だったのが、かえって良かったのかもしれません」

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狩山新四段は、大山康晴十五世名人以来となる岡山県倉敷市出身の棋士として話題に。将棋会館入口の銅板前にて

――目標とする棋士は?

「子供のころから目標としている菅井先生(竜也八段)です。菅井先生のように努力を続ける棋士になりたいですね」

――狩山さんは倉敷市出身ですが、大山康晴十五世名人以来となる倉敷出身の棋士が誕生し、地元からの期待も集まっています。

「初めて知った棋士が大山先生で、憧れました。大山先生の力強い受けは勉強になります」

――師匠の井上慶太九段から、何かアドバイスはありましたか。

「『自信を持って指しなさい』というメールが数日前に送られてきました。そういう気持ちを持って上がれたのは良かったです」

――趣味や息抜きなどはありますか。

「走るのが好きなので、平均して1日1時間ほどランニングしています。菅井先生がランニングに取り組んでいたから、始めたという部分もあります」

――これからの目標をお願いします。

「昨日までは四段昇段が目標でしたが、これからはまず自分の力をつけて、目の前の対局を頑張れるようにしたいですね」

 同門かつ同郷の菅井八段へのあこがれを口にした狩山だが、棋風は受け主体の居飛車だという。「プロになったから、振り飛車も勉強したいですね」

 また近い世代の藤井聡太三冠(狩山が1学年上)については「僕が奨励会の級位者だった中学生のころ、ネットで指しました。雲の上の存在ですが、僕も頑張らねばと刺激を受けました」と語った。

 現在の関東奨励会幹事は小倉久史七段、佐藤和俊七段、黒沢怜生六段。第69回リーグの始まりと同時に幹事に就任した黒沢六段に話を聞いた。

「まだまだ新米幹事ですので、色々覚えることがありますね。私が奨励会を抜けてから7年になりますが、当時と比べると礼儀正しい子が増えた印象です。これも藤井ブームの影響でしょうか。三段リーグの独特の雰囲気は、こちらにもいい刺激になります」

岡井は「あと1つ勝っていれば……」

 数日後、横山の対局が改めて9月19日に行われることが発表された。午前9時開始の対局だったが、持ち時間90分の三段リーグとしては早い終局で、10時半過ぎには終わっていた。

 リーグ最終結果は以下の通り。

(2)横山友紀 13勝5敗(四段昇段)

(5)狩山幹生 13勝5敗(四段昇段)

(6)柵木幹太 13勝5敗(次点獲得)

(14)宮嶋健太 12勝6敗

(15)岡部怜央 12勝6敗

(18)貫島永州 12勝6敗

(22)山川泰煕 12勝6敗

(27)吉田桂悟 12勝6敗

 12勝以上を挙げたのは以上の8名。最終日の時点で四段昇段の可能性があった6名は皆、1敗を喫している。そして最終戦を制したのは岡井だった。「作戦負けからひどいことになりました」とは横山の弁。最後の勝ち印を押した岡井は「あと1つ勝っていれば、でしたか……」とつぶやいたという。

 幹事に確認したところ、横山の対局延期は規定に則ったもので、今回が特例ということではないそうだ。体調不良については、当日の朝は平熱だったが、1局目を終えた時点で発熱が確認されたという。