しっかり考えたいCSまでの持っていき方
12日のロッテ戦に引き分け、7年ぶり3回目のクライマックスシリーズ出場が決まりました。過去2回は共にファーストステージで敗れていて、初出場は僕がコーチになった08年です。あの年はシーズン序盤から不調で5月に監督がコリンズから大石さんに交代。そこから徐々に調子を上げ、途中からは勢いもつき、最後は2位でCS進出。しかし、コーチ1年目の僕も選手もイケイケの気持ちで臨んだファーストステージで日本ハムに連敗。シーズン中のような戦いが出来ず、あっさりと敗れました。
今もう1度やるとしたらCSまでの持っていき方をしっかり考えたいですね。シーズンが終わると、集中力ももたないのでひと息つき、そこからまた上げていきます。しかし、この加減が難しい。絶対にケガ人は出したくないので練習はいわゆる調整といった感じのものになりがちで、あの年もそんな感じだったと思います。ただ、あとになって思ったのは、体のキレや集中力、ボールに対する反応といったものは試合の緊張感の中でこそ高まり、維持できる。逆に実戦から遠ざかるといろんなものが緩んで、落ちてしまう。08年のCSにはシーズン中の反応や試合勘を取り戻している間に負けてしまった、そんな思いが残っています。だから、今年はまだシーズンが終わっていませんが、仮に1位通過となれば10日余り出来る“調整期間”をしっかりと過ごし、大一番へ入っていってほしいですね。
08年はCSファーストステージで敗れ、岡田監督時代の2011年は1毛差で3位に入れず、CS進出を逃しました。翌12年には最下位となり、僕はチームを離れました。その後の14年も2厘差でソフトバンクに優勝を奪われ、CSではファーストステージ敗退。特にT−岡田選手や安達選手らは悔しい思いを何度も味わっており、彼らを通しても継がれてきた、勝ちたい、日本一になりたいといった思いが、この先、勝負を決する場面での力にもなるはず。
あとは尺骨骨折で離脱中の吉田正尚選手がどこかで戻って来るのか、どうか。戦力的にも精神的にもオリックスの大黒柱ですから。近年の吉田選手の活躍を見ているとたまに近鉄時代に戦っていたイチロー選手を思い出す時があります。打撃スタイルとかではなく、シンプルにいつも打つし、いつも塁に出るし、長打もある。相手にとってはどうしようもないバッターで、味方にとってはこれ以上頼りになる選手はいない。オリックスは若手が多いだけに、ポストシーズンで吉田選手復帰となれば様々な相乗効果が期待できるはずです。
ここから黄金期が幕を開けるのではないか
オリックスと近鉄の合併から数えれば16年です。合併当時から球団のカラーが違うとか、まとまるのは難しい、といった声はありました。個人的には特にやりにくさを感じることはなかったですし、同期の谷(佳知)らとも仲良くやっていました。いつも頭に置いていたのは、どこにいてもプロとしてやるべきことをやる、ということでした。ただ、岩隈も分配ドラフトのあとに楽天へ移ったり、近鉄の力のある選手とオリックスが一緒になれば強くなる、と思われていた流れにもならず。結果が出なかったことでまたいろんな声が向けられたことはあったでしょうね。
オリックスの本拠地は今も近鉄時代から使用していた京セラドーム(当時大阪ドーム)で、チーム名にもバファローズが残っています。ただ“近鉄”をリアルな記憶として残している人はどんどん少なくなっているでしょう。近鉄で育った僕にすれば、寂しいところですが、それも時代の流れ。今の選手たちに、これは近鉄っぽいとか、これはオリックスのカラーとか言っても、まったくピンとこないはず。でも、そんな世代の選手たちが溌溂とプレーし、勝ちを重ねる中でようやくオリックス・バファローズというチームが本当の意味で1つにまとまり、新たな一歩を踏み出した気がします。それだけでなく、僕はここから黄金期が幕を開けるのではないか、それほどの期待を持っています。
まずは残り試合をしっかりと戦いCSを勝ち上がる。普段の僕は夜も野球教室があり、ゆっくり試合を見れないことが多いのですが、かつてオリックスのユニフォームを着て勝利を目指した者の一人として、久しぶりに少し、優勝の気分を思い出してみたいですね。
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