近鉄、オリックスで選手として17年、コーチで5年過ごさせてもらい、その間にリーグ優勝は1度。悔しい思いばかりしていた分、優勝の喜びは格別でした。

 近鉄時代の2001年、同期の北川の代打逆転満塁サヨナラホームランで優勝決定。その試合の相手だったオリックスとまさか4年後に合併しているとは……、ですが、それはともかく、あの年はとにかく打って、打って、勢いに乗っての優勝でした。ただ、今思い出した時、この男がいなかったら優勝はなかったかも……、と浮かぶのは岩隈です。投手陣が苦しい中、シーズン後半に先発でしっかりと投げ、高卒2年目の華奢な20歳がチームを救ってくれました。

 優勝するようなチームは思わぬピンチに見舞われても、そこへ新星や若手が台頭。カバーするようなことがよくありますが、特に若手の活躍はチームに勢いをもたらせます。今年のオリックスもまさに、です。山本投手、宮城投手に野手も紅林選手、太田選手、宗選手……。とにかく若手のいきがいい。宮城投手や紅林選手は高卒2年目で紅林選手はまだ10代。若さゆえの失敗も当然あるとして、この若さは短期決戦でも大きな武器になるでしょう。

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現役時代の筆者・水口栄二 ©文藝春秋

驚かされた最近の中学野球のレベルの高さ

 フレッシュな顔ぶれを見ているとスカウティングの成果を思います。僕らがいた頃のオリックスのドラフトは上位指名に社会人、大学生が多かったのですが、ここ数年は高校生を上位で積極的に指名。その選手たちが早い段階から1軍戦力になってきました。彼らの活躍からは近年の高校生のレベルの高さも頭に浮かんできます。この10年前後で確実にワンランク上がったと思います。そして高校生のレベルが上がるにはまたその前段階に理由があります。

 実は今、中学生の硬式チームを指導しながら、一方では、幼稚園から中学生までを対象にした野球教室も行っています。子供を教える難しさと格闘しながら、実感させられている1つが最近の中学野球のレベルの高さです。今、ちょっとびっくりするくらいのレベルに来ています。こうした少年野球のレベルアップが高校球児のスケールアップ、さらにはプロの1軍で19歳、20歳が早々に活躍する流れも作っているのです。そう思うとオリックスの若き選手たちの次々の活躍も時代を象徴するものに思えてきます。

 ほんとに、オリックスの1軍メンバーの顔触れはここ2、3年で一気に変わりましたからね。オリックスへ進んできた素質豊かな選手たちが、去年までのファーム監督で、昨年途中からは1軍監督となった中嶋監督とも出会い、積極的で我慢強い起用の中、力も引き出され、結果にもつながっていったのでしょう。