ダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドの最後の敵サフィンを演じるのは、ラミ・マレック。『ボヘミアン・ラプソディ』のフレディ・マーキュリー役で、アカデミー主演男優賞を受賞した演技派だ。

「007は世界中の誰もが知る存在で、その象徴であるダニエルと共演できたことは本当に嬉しかった。彼は精神的にも肉体的にもデキる人で、役者としても人間としても素晴らしい。彼とセットにいると、『スクリーンで見てる彼と一緒にいるなんて!』と不思議な気がしたよ。劇場の最前列にいるみたいだった」

 クレイグを絶賛し、こう続ける。

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「この映画はダニエルの最後の007だし、アジア系監督が初めて撮る007でもある。僕ら全員がベストを尽くしたし、想像を遥かに超えた傑作になっていると思う」

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 サフィンはボンドの恋人マドレーヌ・スワン博士と因縁があるという。焼け爛れた顔を日本の能面で覆っている、謎の人物だ。

「監督のキャリー・ジョージ・フクナガは、画面に映るものには意味があり、細部に至る全てがストーリーに貢献すべきと考えている。はりめぐらされた伏線と仕掛けが緊張と衝突を生み、最大の衝撃と恐怖を与える。だから、能面を被ったということは、そこに何らかの意味があるんだ。キャリーはとても知的な人。映画作りは全てにおいてハイレベル。そして、世界中どこにいても、まるでそこで生まれ育ったかのように見える不思議で特別な人なんだ」

 画面ではカリスマ性たっぷりに見えるマレックだが、素顔は少年のようで、はにかみながら話すのが印象的だ。オスカー受賞後に007の悪役を演じる気持ちを尋ねると「ハビエル・バルデムになった気分さ」と笑う。2012年公開の『スカイフォール』で悪役シルヴァを演じたスペイン出身のバルデムも、映画『ノーカントリー』の殺人者役でアカデミー助演男優賞を受賞している。

「ハビエルは映画史に残る偉大な俳優だと思う。『スカイフォール』も恐ろしかったし、『ノーカントリー』のアントン・シガーは、悪の演技の極みだよ。俳優として、あれを盗むのも仕事だと言えるね。アンソニー・ホプキンスのレクター博士(『羊たちの沈黙』)と並ぶ悪役であり、僕も今回、そんなレガシーの一員になることが出来たら嬉しい。サフィンが最高に酷いことをするのは、間違いないからね」

 亡き父が大の007ファンで、子供の頃によく映画を一緒に観たというマレック。両親はエジプトでは少数派のクリスチャンだった。エジプト系であることを誇りに思う彼は、外見や宗教、出身への偏見がこの究極の悪役を生み出したのなら断ろうと考えたが、フクナガ監督の考えが違うことを知り安心したという。

「僕自身の考えとしては、悪意の背景に宗教は絡んでほしくないし、理屈に合わないと思う。歴史を振り返ってみても、究極の悪というのは、宗教から派生したものではないと思うんだよ」

Rami Malek/1981年、米ロサンゼルス生まれ。両親はエジプトからの移民。ドラマ『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』(15~19年)の天才ハッカー役でブレイクし、『ボヘミアン・ラプソディ』(18年)でオスカーを受賞。

INFORMATION

映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
10月1日公開
https://www.007.com/no-time-to-die-jp/