SEKAI NO OWARIのメンバーのSaoriさんとして活動し、そして作家であり、子育て真っ最中でもある藤崎彩織さんが、日々のあれこれに悩みながらなんとか前へ進もうと綴った文章をまとめた『ねじねじ録』を刊行。

 これを読んでぜひ感想を伝えたい! と進み出たのは、『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』などの著作やSNSで人気の作家・岸田奈美さん。

 いま最も広く共感を呼んでいる稀代の書き手ふたりの対談を、ここに。(全2回の2回目。前編を読む)

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なんであんなに家族の仲がいいのか

岸田 でも彩織さんの話には、いつもほのかに明るい希望が差しているのを感じます。見落としそうなささやかな希望ですけど、それがちょっとずつ見えてくるのがおもしろい。これはクセになる感覚ですよ。深夜に5分だけやってる、めっちゃ暗いのにシュールで笑えるテレビ番組みたいで。そんな番組あるかわかりませんが。

藤崎 希望が差し込んでいるというのは、岸田さんの書くものにこそ言えることなんじゃないですか。不思議だったんですけど、なんであんなに家族の仲がいいんですか? これだけ家族の話をずっとしていられるっていうのも、なかなかないことなんじゃないかと思います。

岸田奈美さん

これはこれでひとつの幸せのかたち

岸田 そこは、外から見ると足りないものがいろいろあるのが、うまく作用しているのかもしれないですね。

 家族のことを書くのが多いもうひとつの理由が、家族と過ごす時間が長かったから。小さいころから何かというと家族のことでたいへんだったのは事実で、ちゃんと学校に行って友だちをつくってということがあまりできなかった。それで友だち付き合いとか行事ごととか、いろんなものごとを家族の中で経験してきたというのが実際のところ。家族の存在を拡張することで、いろんなものを補っていたというか。それでいうと彩織さんにとっては、バンドが家族みたいなつながりを生んできたものなのでは?